タスクシフティングに対応

木暮氏
薬学ゼミナール生涯学習センター(認定薬剤師認証研修機関G13)は、かかりつけ薬剤師のあるべき姿に向けた1歩目の薬剤師生涯学習講座として、今月から「超デキるかかりつけ薬剤師プログラム」の提供を開始した。医師が実施していた業務を多職種に移管する「タスクシフティング」に対応したカリキュラムとなっており、かかりつけ薬剤師になるための基礎が学べるよう、九つの講座に厳選して一つのコースにした。木暮喜久子センター長は、「われわれが生涯学習を開始して10年かけて作り出した教育プログラムであり、まさに薬剤師生涯学習の集大成となる。ぜひ多くの薬剤師に参加してもらいたい」と話している。
超デキるかかりつけ薬剤師プログラムは、同センターが筑波大学医学医療系臨床医学域地域医療教育学の前野哲博教授との産学協同で開発したもの。既存の職種が枠にとらわれずに多職種がお互いカバーし、必要な医療を提供していくタスクシフティングが議論される中、薬剤師が今後地域で活躍していくために、タスクシフティングを実践するための技術を学べるようにしているのが特徴だ。
具体的には、[1]地域医療で求められる薬剤師の役割[2]信頼関係を構築するコミュニケーション技法[3]診断に役立つ病歴聴取[4]予防・健康増進[5]主訴別にみた鑑別診断の進め方[6]日常よく遭遇する疾患・病態に関する基礎知識[7]効果的な情報伝達[8]医師の診療プロセスの把握とそれを活用した患者支援[9]患者中心の医療と多職種連携の実践――の9講座をカリキュラム化した。医師である前野氏がこれまで実践してきた教育講座の中から、かかりつけ薬剤師に必要なスキルを身につけられる講座を厳選し、今月から提供を始めた。
ポイントとしては大きく分けて3点挙げられる。まずは、2015年に策定された「患者のための薬局ビジョン」で求められているかかりつけ薬剤師のスキルを身につけられることを前提とした内容になっている。さらに、薬剤師は地域包括ケアシステムにおいて患者ではない地域住民と接点を持つ唯一の医療従事者であることを踏まえ、未病・予防の人たちへの医療の窓口としての役割を担えるようにする。そして、介護や福祉とも連携し、処方箋や検査データから患者の状態、多職種の意向やニーズを把握した上で薬剤を検討できる“薬という枠を越えた薬剤師”への到達を目指せるようにした。
同センターでは設立後10年にわたって、前野氏と連携して薬剤師の生涯学習講座を実施してきた。患者の病態、生活背景などを理解した上で薬物療法だけでなく職種の壁を越えた連携ができる「スキルミックス薬剤師」の養成に向けた集合研修の実施やeラーニング教材での学習支援に始まり、患者の主訴から情報収集、解釈を行い、セルフケアでよいのか、受診勧奨をするべきかを判断する「症候診断」などを学べる講座も開催した。近年では薬剤師がチーム医療で高い成果を生み出すために、薬に関する専門知識以外に、組織人として必要なスキルを養成する「ノンテクニカルスキル養成講座」など幅広く展開している。
生涯学習講座のコース化は、同センターの立ち上げ時から構想していたもので、過去10年間の集大成の位置づけとなっている。木暮氏は、「この10年間で若い薬剤師に多く参加してもらえるようになっている。グループワークの中でも真剣に考え、積極的に意見を言えるようになっているのを見ると、生涯教育を続けてきた成果は大きい」と意識の変革で手応えを語り、「今回の教育プログラムに参加してもらうことで、かかりつけ薬剤師になるための1歩目を踏み出すきっかけにしてほしい」と力を込める。
今後、同プログラムを生涯教育の中心に据えることで、多職種と連携し、地域で活躍する薬剤師を1人でも多く輩出していくことを目指す。将来的には、同センターで学んだ受講者が講師になり、薬剤師に必要とされる意識やスキルが次世代に伝承されていく環境醸成につなげたい考えだ。
薬学ゼミナール生涯学習センター
http://www.yakuzemi-shougai.jp/