2022年も残すところ5日ほどとなった。今年の出来事を振り返ると、将来を予測することは難しい「不確実性の時代」がさらに高まってきたような印象を受ける。新型コロナウイルス感染症収束の見通しが見えない中、従来の定説や先入観だけでは想像しなかったような事象も多く見られた。
世界的な出来事では、2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻がそうだろう。1年近く経過した今も、戦火は収まっていない。その影響は、世界的な燃料価格や原材料価格高騰などに飛び火し、各国のインフレにも拍車をかけている。
スポーツの世界では、先日まで熱戦が繰り広げられていたサッカーFIFAワールドカップでは、日本代表が予選リーグでドイツ、スペインを撃破するなど、歴史的偉業を達成。格上とされていた強豪国から得た勝利に、サッカーファンならずとも歓喜に酔いしれた。いずれも従来の思考の延長線上だけでは予測できなかった事象と言える。
薬業界でも程度の違いはあれ、不確実性の高い事象が現在進行中だ。象徴的なのが後発品を中心とした医薬品の供給不安である。20年末以降、相次いで後発品メーカーの違法製造が発覚し、業務停止処分などの影響で後発品のみならず、先発品でも限定出荷、出荷停止が行われている現状がある。
日本製薬団体連合会が発表した調査結果でも、8月時点で後発品のうち約4割を超える品目で出荷停止や限定出荷状態にあることが示された。
いつ頃のどの時点でこれらの問題が解消されるのか。企業努力だけで解決できる問題ではないためか、「数年はかかるのではないか」(関係者)とする見方は少なくない。
来年度の中間年薬価改定では、急激な原材料費の高騰、安定供給問題への特例対応として不採算品再算定を実施し、1100品目の薬価を引き上げる措置が取られることになったが、どの程度の効果があるかは未知数だ。後発品の供給不安については長期化も予想される中ではあるが、一刻も早い解決が望まれる。 一方、電子処方箋の本格運用が来年1月26日からスタートすることになった。処方、調剤、服薬などの情報が横断的に分析されることで、薬局薬剤師にとっても大きな業務変革につながることが期待される。薬局業務の効率化だけに主眼を置くのではなく、国民・患者の視点で有意義な仕組みとしなければならない。
厚生労働省が推進する地域包括ケアシステム構築のメドとされている「2025年」まで、あと3年ばかりとなった。今、あらゆる環境が目まぐるしく変わる不確実性の時代を迎えている。
こうした中で薬業界、そして薬剤師、薬局のあるべき姿を追求していくためには、従来の延長線上にない変化までも想定した取り組みが一層必要になってくる。