田辺三菱製薬は28日、葉山夏樹社長が取締役相談役に退き、土屋裕弘副社長が社長に昇格する人事を発表した。また、下宿邦彦副社長が代表権のある副社長に、小峰健嗣副社長は相談役となる。役員人事は、6月19日に開催予定の株主総会と取締役会で正式決定する。
社長交代は、2007年10月の田辺三菱製薬発足以来、葉山社長が取り組んできた経営の効率化と事業の再構築、人事・労務制度の統合、C型肝炎問題などの経営課題が一段落したことを受け、「国際創薬企業」に向けてより一層のスピード化を図ることを目的としたもの。
会見で葉山社長は、後継者に土屋氏を選んだ理由として「新社発足以来、副社長としてリーダーシップを発揮し、経営戦略面における重要なポジションで活躍してきた」ことを指摘。「熟慮断行型で、ピンチに強い。薬業界の置かれた厳しい環境の中で、田辺三菱製薬が躍進するには打ってつけの人材」だと話した。
一方、土屋新社長は、「夢のある新薬を上市し、夢のある企業を実現し、国際創薬企業へと飛躍したい」と展望。さらに、「透明性の高い開かれた企業を目指したい。そのためには、自由闊達な企業風土の醸成に務め、夢の溢れる会社にしたい」と抱負を述べた。
また、今後取り組むべき二つの重要課題として、「企業としての社会的信頼の回復」と「世界に向けての新薬の上市」を指摘した。
企業としての社会的信頼の回復では、バイファにおけるメドウェイのデータ差し替え問題に言及。27日付けで「メドウェイの調査委員会」を立ち上げ、「横断的に組織を使って、原因究明を行い、再発防止を図りたい」とした。
世界に向けての新薬上市については「疾病構造が多様化する中、アンメットニーズは多く、製薬企業が果たすべき役割は大きい」と強調。その上で、「合併により両社の研究開発の強みが補完できた。また、パイプラインの増加や、創薬技術も向上した。豊富な人材が十分に能力を発揮できる職場環境を構築したい」と話した。
さらに、具体的な施策として「新規化合物のPOCを最速で取ることを第一目標としたい。その後は、スピード化を図るための導出や、販売・開発のアライアンスなどを視野に入れている」と説明。「米国で腎領域を中心とした新薬を上市して自販体制を構築し、欧州につなげる」構想を改めて示した。
アジアについては、「生産・販売のしっかりした拠点が既に築かれているので、そのラインに新薬を乗せて行きたい」と語った。
また、三菱化学との関係にも言及し、「両社は独立した上場企業で、経営の独自性が維持されている。競争力を強めるために、お互いに必要な時はWIN‐WINのパートナーシップで協業したい」とした。