大阪府・市と事業者の薬局DX推進コンソーシアムの3者は今月6日、共同で国家戦略特区制度を活用した「調剤業務の一部外部委託」を内閣府地方創生推進事務局に提案した。4月に公表された保険薬局(ファルメディコ)単独による提案に対する厚生労働省の回答を踏まえ、形式や実施内容について検討し、再提案したもの。
提案名は「薬剤師の地域における対人業務の強化(対物業務の効率化)」で、今後特区ワーキンググループでの議論などを経て、遅くとも今年度内には実証が開始されるとの見通しのようだ。
府によると、事業実施は薬局DX推進コンソーシアムに参加する企業で大阪市内所在の11薬局で一包化調剤の委受託を行うという。まず、委託薬局で処方箋を受け付け、一包化指示を確認。患者の同意を得た上で、一包化だけを受託薬局へ委託する。
受託薬局は、指示通り薬剤を一包化し、薬剤の確認を行う。当初は患者へ直送することも検討されていたが、委託内容の確認が課題とされ、今回の特区提案では委託薬局に薬剤を戻して、そこで最終監査、服薬指導を行った上で、患者に手渡す流れになった。
実施に当たっては、厚生労働科学研究班が策定した「調剤業務における調製業務の一部外部委託における医療安全確保と適正実施のためのガイドライン(暫定版)」に準拠する形で行うとしている。
府は、特区活用で早期に実証に至ることができれば、抽出できた課題を国に対してもフィードバックできると前向きの姿勢を示している。
特区提案で目指すところは、他の薬局に一包化を委託することで薬剤師の対物業務を軽減し、対人業務の充実につなげるという点で、服薬後フォローアップや残薬の解消、ポリファーマシー対策などが期待されている。
在宅医療を含む地域包括ケアシステムへの関与、多職種連携の推進や、セルフメディケーション支援、健康サポート業務への取り組み向上など、薬剤師の専門性発揮も想定される効果と位置づけられている。
ただ、どれだけの効果があるのかについては、現時点で未知数であることも確かだ。実際、外部委託について、患者のメリットや対人業務の充実につながるのかという点を疑問視する向きはある。
反対姿勢を示す地元の大阪府薬剤師会は、同コンソーシアムが実証する事業について、患者の医療安全確保の立場から内容を確認し、必要に応じて意見を述べるため、合同のミーティングに外部の立場から定期的に参加することを表明している。
処方する側の府医師会からは、医療安全への注意を大前提として、「中小薬局が取り残される手法は望まない。皆が使えるシステムにしてほしい」との注文もあったようだ。今回の提案について国がどのように判断し、事業がどう進むのかを注視していきたい。