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【CSO/CMR25周年】CSO新時代‐変革実行パートナーを目指す

2023年10月16日 (月)

 日本のCSOは、1998年のコントラクトMR(CMR)事業開始から戦略的なアウトソーシング活用の広がりと共に成長を遂げてきた。医薬品・医療機器等企業の製品ポートフォリオの変化に対し、質を備えたフレキシブルリソースとして、営業、マーケティングからメディカルまで活躍の場を拡大。近年では医療機関に対するサービスも展開されている。製品開発が癌や中枢神経、希少疾患などのスペシャリティ領域にシフトし、コロナ禍を契機にDXが進展する中、CSOは、医薬品・ヘルスケア企業、さらには業界全体の変革を加速する戦略パートナーとして、次なるステージへの挑戦を推し進めている。日本CSO協会幹部にビジネスの現状と今後のビジョンを聞いた。

日本のCSO事業の現状

活用企業数、アウトソーシング率ともに過去最高を更新

 「CSOビジネスはよりダイナミックに進化する転換点を迎えています」と木﨑弘会長(シミック・イニジオ)は現状を捉える。

 総MR数が2014年をピークに減少傾向にある中、CSO協会の調査では、稼働人数は3637人(前年比6.2%増)、アウトソーシング率は7.0%と過去最高を更新して7%台に初めて乗せた(協会加盟5社、22年10月時点)

 CSOを活用する企業のすそ野が広がり続けていることも、特筆すべき点である。活用企業数は前年より17社増の155社とこちらも過去最多を更新し、特に500人未満規模の企業は113社と、調査を開始した09年の24社から5倍近くに増加している。企業の規模によらず、新興のバイオファーマや医療機器等の企業、さらには医療機関(病医院・薬局)まで加わり、広くヘルスケア業界で活用が拡大している状況だ。

活用ニーズの広がりと共に担い手やケイパビリティも多様化

 ニーズの広がりに伴いサービスも多様化し、特定の製品や疾患領域、エリア等を包括的に受託するCSOマネジメント型モデルをはじめ、CSO独自のノウハウを活用した幅広いサービスが展開されている。その担い手もMRに留まらず、MSL、エデュケーショナル・ナースや薬剤師のような専門職、フィールドマーケター、トレーナー、地域包括ケアシステムの推進支援など、多様な人材が活躍するようになっている。

 「こうしたニーズの広がりに即応していくために、CSOの強みとなっているのが“多様性”です」(木﨑氏)。人材面では、多様な職種が増えていることに加え、個々のケイパビリティの幅も広がっている。一定期間ごとに様々な領域や製品を担うコントラクト人材は、多領域経験者が多く、各社がしのぎを削る注力領域を中心に、7領域以上の経験者が過半数、5領域以上では7割近くいる。また、スペシャリティ領域ではCNS経験者が約5割、癌領域では2割強に上るという。

 「このように幅を持った専門性と第三者としての中立性はCSOならでは。業界横断的に多様な企業、領域、製品を担う中で、現場ベースで培ってきた経験やノウハウが、パフォーマンスの質を上げ、新しい発想を生み、ペイシェントジャーニー全体にわたる総合的なサービスを展開できる基盤になっています」と木﨑氏はその意義を説明する。

日本の近未来―米国CSOの動き

組織のアジリティの重要性増す中、戦略活用が進展

前列左から木﨑会長、昌原副会長、後列左から松本理事、八所理事、片岡監事

前列左から木﨑会長、昌原副会長、後列左から松本理事、八所理事、片岡監事

 では、今後はどうか。追い風となるのが、コロナ禍によって大きく加速した変化で、「不確実性が高く、不透明な環境下におけるアジリティの重要性」だ。

 未知の変化に素早く的確に対応できる組織、個人の能力は、ヘルスケア業界、企業においても必須となっており、「CSOの真価を発揮できる好機」(片岡恵連監事:サイネオス・ヘルス)と捉える。

 日本のCSOが向かう道筋を考える上では、世界最大の医薬品市場を有する米国の動きが先行指標となる。

 実際、米国ではテクノロジーの急速な普及をはじめ、日本で起こっている製薬企業を取り巻く環境変化が先行して生じている。そして、そうした変化に対応すべく様々な取り組みが模索される中で、「CSOはより機動的・ダイナミックに活用されている」という(片岡氏)

 例えば、日本では欠員補充の活用が一定比率を占めるが、米国では新薬上市・適応拡大時の垂直立ち上げや、特定領域・エリアのテコ入れなどでの集中的活用のほか、ノンコア領域における効率的活用も一般化しており、新興のバイオファーマ等での営業インフラを含むフルアウトソーシングも始まっている。

固定費の変動費化でコスト効率向上にも寄与

 そうしたオンデマンド型の活用と相まって、外部からのインサイトや組織への刺激に対する期待や、固定費の変動化により経営の柔軟性を高めることなどを目的に、継続的に一定比率をCSOで運用するケースも増えている。

 「派遣型、業務委託型ともに、製薬企業の平均的なコストと比べ、コスト効率の向上が見込めます。中でも米国で主流となっている委託型は、CSOの裁量でチーム編成や活動を最適化するモデルで、マネジメントや営業オペレーション等のコストも変動費化でき、よりそのインパクトが大きくなります」(片岡氏)。こうしたコストメリットに関する理解も、米国でCSOの戦略活用が浸透している背景だろう。

新時代のビジョン

変革実行パートナーへプラスαの価値を創出

 25周年に合わせ実施したカスタマーサーベイ(45社)でも、CSOへの期待の高まりが見られている。CSOのコアコンピテンシーである「採用・配属」「育成」「マネジメント」に対する評価では、全てで「期待通り」以上の肯定回答が9割超に上った一方、さらなる“プラスα”を求める声も寄せられた。

 例えば採用・配属面では、スペシャリティシフトに伴う経験豊富なベテラン人材のニーズと同時に、組織の活性化や将来のリーダー候補となる若手や異業種出身者へのニーズも見られている。さらにナースや薬剤師などの有資格者、MSL・メディカル人材の要望も増え、“人材の多様性”の価値が高まっている。育成面では、変化への対応力やITスキルが重視される傾向が顕著だ。マネジメント面では、成果向上に向けた協業体制の強化、CSO独自の企画や提案、それらによる自社組織への波及力といった要望が挙げられた。

 「今回のサーベイは、お客様がCSOを評価するポイントが高度化・多様化し、私たちへの期待値が高まっていることを再認識する結果となりました。こうしたご要望やご不満の声にもしっかり向き合い、全体で進化を加速させていくことが重要」と、昌原清植副会長(MIフォース)は考察する。

CSOの役割を深化・拡大し、患者中心医療の実現に貢献

 このような顧客の期待や米国からの示唆を見据え、CSO協会が掲げる未来像が三つのあり方だ。サービスの質と幅を同時に進化させることで、顧客企業ひいては業界全体のトランスフォーメーションに寄与していく構えである。

 ▽“質を備えたフレキシブルリソース”として、ROIを最適化=製薬・ヘルスケア業界全体において、様々な面で生産性の向上は不可避であり、顧客企業と同等以上のパフォーマンスをコスト効率良く実現することで、ROIの最適化に貢献していく。

 ▽新たな取り組みの“チェンジエージェント”として、コマーシャルモデルの変革を加速=デジタルミックスなど新たな取り組みに舵を切る上では、多くの壁が存在し、強力な推進役が必要となる。そこでCSOが組織の常識やしがらみに捉われず、先陣を切って成功体験を構築し、組織全体へブーストさせ、変革を促す役割を担う。かねてより多くの企業から、“組織への刺激や新しい風”として評価されてきたCSOの特徴をより昇華させた役割だ。

 ▽製薬・ヘルスケア業界の“人財ポートフォリオ機能”として、人材の流動化・最適化、多様なキャリアや働き方を促進=少子高齢化によって増大する医療ニーズとその担い手不足の不均衡は、大きな社会課題となっている。製薬業界を超えて広くヘルスケア業界の中で、貴重な人的資源の余剰や不足を最適化し、多様なキャリアや働き方を創出していく役割を目指す。

 「日本のCSOがさらに飛躍し、欧米並みのアウトソーシング率10%を超えられるかは私たち次第。不確実性の中で、変わっていかなければいけない時代だからこそ、CSOがお役に立てる場面は増えており、素地はできている。各社それぞれの特色を発揮しながら協会全体で、医薬品・ヘルスケア業界の変革になくてはならないパートナーとして、患者中心医療の実現に貢献していきたい」(昌原氏)

 新時代を迎えたCSOのさらなる進化に期待がかかる。

日本CSO協会 3つの運営委員会の取り組み

人事・教育

木﨑弘 担当理事(会長兼務)

 医療・ヘルスケア分野では、これからも“人の力”が必要不可欠。労働人口が減少する中で、その担い手として活躍できるプロフェッショナル人材を、いかに安定的に輩出していけるかが大きなチャレンジだ。採用力、育成力の強化はもとより、CSOならではの魅力的なキャリアパスや人事制度の整備など、やりがいを持って働きやすい環境づくりに向け、様々な取り組みを進めている。コロナ禍で課題になっているメンタルヘルス対策も新たなテーマ。リモートワークが一般化し、今までとは違ったストレスが生じており、業界内外の様々な事例を持ち寄り、学びや実践を積み上げている。こうしたトライ&ラーンを顧客にも還元していくことで、業界全体の環境向上にも寄与できればと考えている。

法務・ガイドライン

八所孝志 担当理事(アポプラスステーション)

 CSO全体でコンプライアンス体制を強化し、説明責任を果たしていくことが重要であり、厳格化する業界関連法規への対応と共に、新たな顧客やサービスの広がりに即した適正な請負・派遣体制の推進にも、注力していく。

 その一環として、派遣法における特定目的行為について、外部有識者のレビューを受けた共通研修資材の作成、トレーナーズトレーニング、計3回の合同研修を企画。オペレーション、営業、採用など主要部門から延べ300人以上が参加した。

 新しいメンバーに対しても、各社のトレーナーが同一の研修を継続することで、均てん化を図ると共に、多様なテーマをシリーズ展開し、より一層信頼いただけるパートナーを目指す。

広報・マーケティング委員会

松本大輔 担当理事(IQVIA)

 メディアでの情報発信や、協会公式サイト、メールマガジン「CSOのひと・サービス」の新シリーズなどを通じ、新しいCSOの姿を積極的に打ち出していく。顧客、人材の双方から「CSOに任せたい」「CSOで働きたい」と思っていただけるよう、CSOがご提供できる価値、新しい取り組み、サービスやキャリアの広がりをもっと知っていただく必要がある。その積み重ねが、新たなビジネスニーズや人材ニーズを呼び込み、さらなる価値を生む好循環にも生きてくる。

 市場環境、顧客の意識やニーズ変化が早く、大きくなっている中にあって、今回実施したカスタマーサーベイはそうした変化を捉える重要な取り組み。今後も継続し、得られたインサイトをお客様にも共有させていただきながら、マーケットインでのより一層の価値向上につなげていく。

日本CSO協会
https://www.jcsoa.gr.jp/



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