口腔内崩壊フィルム開発へ‐DDS事業200億円目指す
NISSHA(本社京都市)は、2019年11月にゾンネボード製薬(本社東京都八王子市)を買収し、医薬品市場に参入。これまで自社で培ってきた印刷やコーティング技術などを活用したフィルム状の製剤開発を進めている。必要な業許可や医薬品GMP適合工場としての品質管理体制獲得のために投資を実施し、医薬品や食品向け口腔内崩壊フィルム製剤(OTF)の開発製造受託(CDMO)の展開を視野に入れている。
OTFは、水なしで経口摂取でき、服薬性と携帯性に優れている。特に薬剤を舌下や口腔粘膜から吸収させることで速効性と肝初回通過効果の回避によるバイオアベイラビリティ向上が期待できる有用な剤形。ドラッグ・デリバリー・システム技術の活用で、従来の錠剤、注射剤からの剤形変更による市場規模の拡大が見込まれている。
NISSHAは12年頃からマイクロニードルパッチなど新剤形の開発を進める中で、同社のコーティングや成形などのコア技術を生かせる経皮吸収型製剤と口腔内崩壊フィルム製剤に着目。経皮吸収型製剤は米国Sparsha Pharma USAへの出資により市場参入の環境を整備。OTFの国内開発を目指すことになった。
医薬品・化粧品セグメントユニットリーダーの安井俊之氏は「口腔内崩壊フィルム製剤の開発に際し、ゾンネボード製薬は、われわれのターゲットのクライテリアと合致したため買収を決めた」と話す。19年に独自のOTFの製法でNISSHAとして特許を取得。原薬を固形状に固め薄くスライスする製法で水への溶解や懸濁プロセスがなく、高温での乾燥工程も存在しないため水分で失活する原薬や熱に弱い原薬にも幅広く適応できるという。
安井氏は「当社の工法は、高価な原薬であってもほぼ全て回収し、次の工程に移すことが可能で原薬のロスが少ないということもメリットの一つ」と強調する。
21年にはゾンネボード製薬工場内にOTFの製造所の準備を進め、区画内にクリーンルームや装置を設置。NISSHAの工法も技術移管した。「現在バリデーション中で、今年前半には完了する予定」(安井氏)という。OTFのサプリメントは今年中に製造を開始し、段階的にOTC、そして医療用のOTFの開発製造に向け日本・米国での取り組みを進めていく考えだ。
安井氏は「われわれからアプローチできる自社パイプラインを開発し、製薬企業に提案、CDMOビジネスにつなげていく展開を想定している」と展望する。
NISSHAは30年のサスティナビリティビジョンとして売上高3000億円、うちメディカル市場で1500億円を掲げる。このうち日米の医薬品DDS事業で200億円規模の売上高を目指す計画だ。
NISSHA
https://www.nissha.com/index.html