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米食品医薬品局(FDA)は7月2日、アルツハイマー病治療薬ドナネマブ(製品名Kisunla、以下キスンラ)を承認した。同剤はアルツハイマー病の治療に用いられる抗アミロイドβ抗体であり、アルツハイマー病の発症に関連するといわれる脳内のアミロイドプラークの過剰蓄積を除去するという。
キスンラは第3相臨床試験において、軽度認知障害または初期アルツハイマー病があり、アミロイド病変の認められた患者の記憶力と思考力、日常機能の低下速度を遅らせることが確認された。特に、疾患がより早期段階の患者グループでは、18カ月時点で低下速度は35%遅くなったという。
キスンラは、昨年アルツハイマー病の治療薬として承認されたレカネマブ(製品名レケンビ)に似ており、どちらもアミロイドプラークを標的とした疾患修飾薬である。ただ、レケンビは2週間ごとの投与だが、キスンラは月1回の投与となる。
キスンラにはもう1つ、患者と医師にとって魅力的であろう特徴がある。脳内のアミロイドプラークが除去されたことを確認したら、投与を中止できるということだ。これにより、治療費や静注の回数、そして副作用のリスクを低減できる可能性があるという。第3相臨床試験では、キスンラを投与された患者の17%が6カ月で投与を中止し、47%が1年以内、69%が18カ月以内に中止した。投与の中止後も、認知機能の低下は遅くなり続けた。
それでも、この治療は決して安くはない。キスンラの定価(list price)は年間3万2,000ドルだ。レケンビは年間2万6,000ドルだが、アミロイドの除去後も継続することになる。
また、キスンラは、脳の浮腫や出血を含む重大な安全性リスクがあることも確認されている。同剤を使用した患者の約4分の1が脳の浮腫や出血を経験した。ほとんどの症例は軽度だったが、2%は重症で、副作用に関連して3人が死亡した。こうしたリスクは、脳微小出血の既往のある患者、アルツハイマー病リスク遺伝子APOE4を保因する患者などでは特に高い可能性がある。
同剤の承認はイーライ・リリー社に与えられた。リリー・ニューロサイエンス社のエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼プレジデントであるAnne White氏は、「有効な治療選択肢を早急に必要とするアルツハイマー病の初期症状を有する人々にとって、キスンラは極めて有意義な結果を示した。疾患の早い段階で治療を受ければ、これらの薬から最大のベネフィットを得られる可能性があることが分かっており、われわれは他の企業と連携して検出と診断の改善に懸命に取り組んでいる」と、プレスリリースでコメントした。(HealthDay News 2024年7月2日)
Source
https://www.healthday.com/health-news/mental-health/fda-approves-new-drug-to-treat-alzheimers
(参考情報)
FDA
https://www.fda.gov/drugs/news-events-human-drugs/fda-approves-treatment-adults-alzheimers-disease
Press Release – Lilly
https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lillys-kisunlatm-donanemab-azbt-approved-fda-treatment-early