厚生労働省医薬産業振興・医療情報審議官 内山博之

医薬品は、国民の健康・生命を守る重要な物資であり、供給の途絶は国民生活に重大な影響を及ぼし得ることから、安定供給の確保は重要です。従前より、製薬企業への増産要請や増産に取り組む企業への補助等を行ってきましたが、本年はこうした取り組みを引き続き実施すると共に、一層の安定供給の確保に向け、製薬企業における安定供給体制の整備や供給状況のモニタリングの制度化に向けた検討を行っていきます。
また、後発品産業においては、少量多品目生産といった構造的課題がある中で、製薬企業の薬機法違反を契機とした供給量の低下等により供給不足の事態が生じていると認識しています。こうした産業構造上の課題の解決については独占禁止法との関係整理や金融財政措置など、後発品企業の事業再編に向けた環境整備を行うこととしており、実施できる取り組みから迅速に着手し、構造改革を強力に進めていきます。
合わせて、バイオ後続品も含めた後発品の使用にかかるロードマップとして、昨年9月に「安定供給の確保を基本として後発品を適切に使用していくためのロードマップ」および「バイオ後続品の使用促進のための取り組み方針」を策定していますので、これらに基づく取り組みも着実に進めていきます。
創薬力の強化については、昨年5月に内閣官房において「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」の中間取りまとめが行われたほか、7月には「創薬エコシステムサミット」を開催しました。日本を起源とする医薬品の世界市場でのシェアが低下する中、アカデミア、スタートアップ、製薬企業、VC、政府等が相互に協力して創薬に取り組むエコシステムを構築していくために、官民連携のもと、企業、大学等が安定的・継続的に創薬に取り組み、実用化につなげることができるような環境整備に取り組んでいきます。
2025年度には、創薬エコシステムの具体的な施策の方針や進捗状況について国内外の関係者で議論する「官民協議会」を設置する予定であり、必要な準備を進めていきます。
医療DXの実現に向けては、医療DXの推進に関する工程表に沿って、医療介護全般にわたる情報を共有・交換できる「全国医療情報プラットフォーム」の構築や電子カルテ情報の標準化等を進めています。また、25年度中の電子カルテ情報共有サービスの運用開始等を進めていきます。