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米食品医薬品局(FDA)は、1月28日、2型糖尿病(T2DM)と慢性腎臓病(CKD)を併発している成人患者に対する腎機能低下などのリスク抑制目的で、GLP-1受容体作動薬のオゼンピック(一般名セマグルチド)を用いることを承認した。同薬により末期腎不全リスクが24%低下するという新たな研究データに基づくもの。ただ、同薬は現在、品薄状態にあり、入手困難となることも予想される。
CKDは米国成人の7人に1人以上が罹患しており、T2DMはその主要な原因疾患の一つ。これらの疾患を併発している場合、腎機能の低下や心血管疾患のリスクが相加的に高まる。今回のFDA承認により、このようなハイリスク状態の患者に対して、オゼンピックを腎不全や透析のリスク抑制、および、心血管死のリスク抑制の目的で処方することが可能となった。同薬のメーカーであるノボノルディスク社のStephen Gough氏は、New York Times紙の取材に対して、「T2DMに伴う心腎リスクに対しては、過去20年間にわたり多くの研究が行われてきたが、成果が乏しかった。そうした中でのこのたびの承認は、非常にエキサイティングで、かつ患者に希望をもたらすものだ」と話している。
オゼンピックはすでに、T2DMにおける血糖管理、および、T2DMに伴う心血管イベントリスクの抑制という適応を有していた。今回の適応追加は、T2DMとCKDを併発した患者に対して同薬を投与した場合に、透析や腎臓移植を要する腎臓合併症のリスクが24%低下したことを示す研究結果が評価されたもの。その研究に参加した患者は、腎機能低下の速度が遅く、かつ、心血管死のリスクも低かった。米ボストンのベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのMelanie Hoenig氏は、New York Times紙の取材に対して、「腎機能の低下は可能な限り抑制した方が良い」と答えている。
オゼンピックは“減量薬”と呼ばれることもあるが、正式には減量目的での処方は承認されていない(同一成分のセマグルチドが「ウゴービ」という商品名で肥満治療薬として承認済み)。オゼンピックはこれまで、主として血糖管理目的で処方されていたが、腎機能の維持や全身の炎症状態を抑えるという効果も示唆されてきている。一方、腎保護のための治療薬として従来、血糖降下薬以外に降圧薬や脂質低下薬が用いられることがあったが、選択肢は限られていた。
オゼンピックがT2DMに伴うCKD治療薬としても認可されたことで、同薬の需要拡大が見込まれる。ただし、FDAは現在、オゼンピックやウゴービを供給不足状態にある医薬品リスト(drug shortage database)に掲げている。Hoenig氏もNew York Times紙に対して、「残念ながら、多くの人が入手できない状況にある。しかし、効果が認められ忍容性のある場合、治療の選択肢が増えることは素晴らしいことだ」と述べている。(HealthDay News 2025年1月29日)
(参考情報)
The New York Times
https://www.nytimes.com/2025/01/28/well/ozempic-kidney-disease.html
FDA drug shortage database
https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/drug-shortages