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【産総研/就実大】抗ウイルス成分のコーティング技術開発‐マスクや医療用ガウン等への適用目指す

2025年03月03日 (月)

 産業技術総合研究所電子光基礎技術研究部門などの研究グループと就実大学薬学部は共同し、シートから繊維まで幅広い形状の基材に対して、短時間で抗ウイルス成分をコーティングする技術を開発した。この技術は、薬剤の溶出を伴わず抗ウイルス効果が発現するため、粘膜や傷口に長時間接触するような用途でも安全に使用できる。

 COVID-19などの影響によって、抗ウイルスコーティングの需要が高まっている。しかし、既存技術は基材へのダメージの懸念や意匠制への影響があり、適応可能な基材の表面化学構造や基材自体に制約が多いのが現状。

 今回、産総研と就実大で開発した先行技術で有効性が確認され、洗口液などで日常的に利用されているクロルヘキシジン(CHX)を抗ウイルス薬剤として選定した。

 CHXは、炭素・窒素・塩素から構成される分子。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのシート状ポリマー材料、およびポリエステル繊維布を基材として、CHXを塗工した後に紫外線照射を1分間程度行った。その結果、CHX成分の抗ウイルス効果を損なうことなく、CHX分子からの塩素原子1個の脱離反応を経由して基材表面へ直接分子を固定できることを見出した。

 PETフィルムを基材としてCHXコーティング処理すると、X線光電子分光分析(XPS)においてPETフィルム成分である炭素・酸素に加えてCHX由来の窒素・炭素が観測された。CHX成分には塩素2原子・窒素10原子が含まれており、XPS分析におけるコーティング処理CHX薬剤の窒素に対する塩素の元素比は0.22、CHX固定部材の窒素に対する塩素の元素比は0.15であったことから、CHXから塩素原子1個が脱離し分子構造を保持したまま固定化されたと推定された。

 就実大でCHX固定部材の繊維製品の抗ウイルス性試験および非繊維製品の抗ウイルス性試験を行い抗ウイルス活性値を算出すると、インフルエンザウイルスに対してそれぞれ99.9%以上、99.99%以上と非常に高い不活性化率を示した。

 CHX固定PETフィルムについても就実大内で実証試験を行い、透明性が維持されるため意匠性を損なわないこと、現時点では実使用下において2カ月間の持続性があることを確認している。

 今回開発された抗ウイルス性ナノコーティング技術は、繊維からシートまでの幅広い種類の基材へ適用できることを特徴としている。特に、繊維製品に適応でき、ナノコーティングのため繊維の風合いを損なうことなく、マスクや一般服飾、医療用繊維部材、装具などへの適用が期待される。研究グループは今後も、実績環境下における実証試験を継続すると共に、用途に応じた抗ウイルス成分の固定量の制御、また大量生産を目指したロールtoロール製造への展開を図っていく予定にしている。



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