
日本医療機器学会が設立されてから、既に1世紀以上が経過した。この間、国産医療機器の品質向上を目指し、医療機器製造販売業者と医療関係者が手を携えて規格作りや国際交流の推進に取り組むと共に、医療機器を取り扱う人たちの教育や資格認定なども行ってきた。医療機器学会は今後どのような活動を進めていくのか、理事長の高階雅紀氏(大阪大学医学部特任教授)に、これまでの歩みも含めて考えを聞いた。
人材育成も重要な柱に‐資格認定で意欲を高める
――医療機器の研究開発や改良には多職種で対応すべきで、学会はそのための教育にも取り組む必要があるとのお話でしたが、人材育成にはどのように取り組んでおられますか。
高階 いま私たちの学会では、第1種および第2種滅菌技師/士、医薬品でいうMR(Medical Representatives=医薬情報担当者)の医療機器版であるMDIC(Medical Device Information Communicator=医療機器情報コミュニケータ)、これは医療機器全般にわたる広い知識を持ってコーディネートする人です。さらに他団体との共同ですが臨床ME専門認定士、合わせて3つの資格認定を行っています。
滅菌技師/士についてお話しさせていただきますと、医療機器の中には洗浄や滅菌などの再生処理をして繰り返し使用するものが数多くありますから、滅菌供給は重要なテーマです。滅菌や消毒を看護師の管理下で行っている国や、薬剤師の管理下で行っている国がありますが、日本はそこが明確化されていませんでした。そこで私たちの学会が2000年に、滅菌技師/士の資格や滅菌供給の品質保証のためのガイドラインを作成したのです。2008年には、WFHSS(滅菌供給業務世界会議)という国際会議にも加盟しました。
手術で使った機械などは洗浄・滅菌してから再使用しますが、日本では25年前のこの当時、滅菌の品質保証が確立されていませんでした。というより、どのように品質保証するかという学問が成立してなかったのですね。外国に比べて10年か20年遅れていると感じていましたが、ようやく対等に話ができるまでになったかなと思います。
――医療機器の流通については如何ですか。
高階 研究開発に当たる人は工学系や理学系の大学で育成されていますし、マーケティングを専門とする人たちもいます。医療機器の再生業務を担う滅菌技師/士も、MDICも育ててきました。それに対し医療機器の物流に関わる人たちは、やや置き去りにされている面がありますので、何かモチベーションが上がるような方策を取り入れたいと思っています。
病院内物流の対象になるのは主として単回使用医療機器で、1回だけ使用して廃棄してしまうものです。それを発注、納入、検品して所定の場所に所定の量を配置する、使われたら補充して使用量をトレースし、その結果を病院経営に生かす、そういう役割ですが、残念ながら医療安全や感染制御、病院経営などの知識を習得する機会がほとんどありません。
――具体的なお考えがあるのでしょうか。
高階 資格認定を考えています。教育の機会を与えて一定の知識を得た人を、例えば医療機器物流管理士というような形で学会が認定する方式です。病院内で医療機器の物流を担当されている企業の人たちに対して、どういう情報を教育啓蒙すればよいのか、いま関係業界の方々に相談させていただいています。数年以内には資格認定までもっていきたいと思っています。
(【その4】に続く)
▶一般社団法人 日本医療機器学会 発展の歴史と今後の方向‐高階 雅紀理事長に聞く【その1】
▶一般社団法人 日本医療機器学会 発展の歴史と今後の方向‐高階 雅紀理事長に聞く【その2】
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