
日本医療機器学会が設立されてから、既に1世紀以上が経過した。この間、国産医療機器の品質向上を目指し、医療機器製造販売業者と医療関係者が手を携えて規格作りや国際交流の推進に取り組むと共に、医療機器を取り扱う人たちの教育や資格認定なども行ってきた。医療機器学会は今後どのような活動を進めていくのか、理事長の高階雅紀氏(大阪大学医学部特任教授)に、これまでの歩みも含めて考えを聞いた。
縦割りの医療に横串を‐物流や安定供給が当面の焦点
――話は変わりますが、医療機器研究における最近のトレンドについては、どのような認識をお持ちですか。
高階 トレンドは自動化、省力化ではないかなと思います。労働人口が激減していく中で、多くの人手をかけることはできませんし、もともと医療というのは労働集約型産業で、人手がかかる割に収益性が高くないという面があります。ですから当面は、いかに人手をかけずに品質の高い医療を提供できるか、そこが焦点になってくると思いますね。
――医療や工学分野などでは次々に新しいニーズや技術が生まれていますが、学会としては医療機器研究にどのようなスタンスで臨まれますか。
高階 医療は専門性が非常に高くなっており、ある特定分野の診断や治療に用いる機器を開発するのは、その分野に特化した企業とスペシャリストの医療者との連携で進められます。ですから医療機器学会という立場で関与していくことは難しくなってきました。
むしろ、そういう縦割りのところへ横串を刺すことに、私たちの学会の存在価値があるのではないかと考えています。例えば全ての医薬品にはバーコードが付けられていますが、それと同じように全ての医療機器にソースマーキングをしましょうとか、そういう横串を探ることになってくるのではないでしょうか。
結局、医療機器に関わる研究が私たちの使命ですが、特定の疾患の診断や治療に用いる医療機器の開発という部分は、もう私たちの学会の手を離れつつあります。今後は医療機器全体に網をかけることができ、かつ社会のために役立つような活動を模索することになると思います。当面は省力化、自動化、医療物流や安定供給、そういう点が新たな課題になっていくのかなと考えています。
(おわり)
▶一般社団法人 日本医療機器学会 発展の歴史と今後の方向‐高階 雅紀理事長に聞く【その1】
▶一般社団法人 日本医療機器学会 発展の歴史と今後の方向‐高階 雅紀理事長に聞く【その2】
▶一般社団法人 日本医療機器学会 発展の歴史と今後の方向‐高階 雅紀理事長に聞く【その3】