関西医科大学と島津製作所は15日、光免疫療法の治療効果を可視化するための臨床研究を開始すると発表した。研究では、切除不能な局所進行または局所再発が見られる頭頸部がん患者を対象に、光免疫療法の術前・術中・術後の正確な診断、手技、評価の実現性の検証などを実施する。研究期間は今月1日から2027年9月30日まで。
光免疫療法は、がん細胞に特異的に結合する抗体と光感受性色素(IR700)を組み合わせた薬剤の投与後、がんに対してレーザー光を当てることで細胞死を引き起こす、がんの新しい治療法。同社は2003年から、米国国立衛生研究所の小林久隆主任研究員(関西医科大学附属光免疫医学研究所所長)と共同で同治療の効果測定に関する研究などに取り組んできている。
共同研究は、光免疫療法の研究で重要なステップであり、特に腫瘍部分への薬剤集積の確認およびがん細胞の破壊の物理的証明に関しては、ヒトを対象とした世界初の取り組みとなる。
まず、同社製の近赤外光イメージングシステムを使用し、光免疫療法の光照射中の蛍光信号の変化を観察することで薬剤の反応状況を評価する。また、蛍光信号の変化と治療効果の関連性も評価する。
次に、同社製の近赤外光イメージングシステムで、光免疫療法の光照射前後における薬剤の集積を観察する。光照射前に治療対象部位とその周辺に薬剤が適切に集積をしているかを評価する。また、薬剤集積の照射前後の比較により薬剤反応部位の評価を行う。
最後に、尿や血液の分析を通じて、がん細胞が物理的に破壊されたことの証明を目指す。治療前後に採取された血液および尿に含まれるリガンド(薬剤を構成する水溶性物質)やその他の成分を分析計測機器で調べ、治療効果を確認する方法の確立を目指していく。