日立製作所は13日、細胞遺伝子治療薬の開発に取り組む製薬企業やバイオテックなどを支援するため、デジタル技術とバイオ技術を融合した「デザイン細胞開発プラットフォーム」技術を開発したと発表した。この技術は、生成AIを用いた遺伝子配列の自動生成とハイスループット細胞評価を連携させることで、従来の数十種類/年程度の細胞設計・評価から10万種類/年程度の設計・評価を可能にする。これにより、細胞遺伝子治療薬開発の探索研究に要する期間が短縮されることが期待される。
同技術で用いられる日立独自の遺伝子配列生成AIは、自然言語処理技術を応用して、膨大な遺伝子配列データから進化的保全性に基づき統計的なパターンを効率的に抽出し、新たなCAR遺伝子配列のデータベーセスを生成する。さらに、遺伝子配列と細胞機能の相関を示す実験データを学習させることで、1億通りの組み合わせの中から、がん細胞に対する活性を最大化するCAR遺伝子配列を探索することが可能となっている。
ハイスループット細胞評価システムは、単一細胞レベルでCAR-T細胞を評価可能なプールスクリーニング技術と、ロボット操作により細胞への遺伝子導入から細胞の機能解析まで一連の工程を自動化したアレイスクリーニング技術を組み合わせることで、業界最大規模の10万種類/年程度の細胞を様々な指標で評価可能なシステム。一度に1万4000種類のCAR-T細胞の細胞障害活性評価が可能となり、CAR遺伝子配列に関連付けられた活性データの大規模取得が実現している。これにより、CAR遺伝子配列の全領域の改変と多数の改変組み合わせ評価が可能となり、薬効の高いデザイン細胞の設計・開発を加速させる。
今回、遺伝子配列生成AIを用いた遺伝子デザイン(Design)、ロボット操作により自動化されたハイスループットな細胞への遺伝子導入(Build)、プールスクリーニングとアレイスクリーニングを組み合わせた大規模かつ精密な細胞機能の解析(Test)、遺伝子配列と細胞機能の相関解析(Learn)を遺伝子設計へフィードバックする、日立独自のDBTLサイクルを構築した。このサイクルを複数回実行することで、がん細胞に対する活性の高いCAR-T細胞を効率的に設計でき、動物試験でも従来型を上回る腫瘍縮小効果を確認している。
同社は、製薬企業やバイオテック、アカデミアとの協創によって、同技術の効果検証を進めることで、細胞遺伝子治療薬の開発効率向上を支援し、がんやその他難病の克服に向け貢献していく。また、今回の成果の一部は13~17日に米国ニューオリンズで開催される米国遺伝子治療学会での発表を予定している。