富士フイルムは11日、独自の浸透型単層リポソームに「ヒト型セラミド」を配合した「セラミド配合単層リポソーム」を開発したと発表した。また、同リポソームにおいて、皮膚のバリア機能の一つである肌内部の水分蒸散抑制機能が従来よりも向上することを確認した。今後、スキンケア化粧品の開発に応用していく。なお、同社は7月4~5日、東京有楽町の有楽町朝日ホールで開催される「第50回日本香粧品学会学術大会」で今回の研究成果を発表する。
スキンケア化粧品分野の研究開発を進める同社は2022年、独自設計の「単層リポソーム」2種を開発している。今回同社は、角層になじみやすいリン脂質で構成される「単層リポソーム」の処方技術を進化させ、肌内部の水分蒸散抑制機能を向上させる「セラミド配合単層リポソーム」の開発に取り組んだ。
角層は、角質細胞と角層細胞間脂質で構成されている。角層細胞間脂質は、「ヒト型セラミド」のほか、コレステロール、脂肪酸などから成り、層状に積み重なるラメラ構造を形成することで、肌内部の水分蒸散を抑制している。
同社はまず、角層になじみやすいリポソームがヒト型セラミドの「ラメラ構造」形成能を促進すると考え、リポソームの外側の層に3種の「ヒト型セラミド」を配合した、「セラミド配合単層リポソーム」を開発した。
「ヒト型セラミド」は、水にも油にも溶けにくく、結晶性が高いため、単層リポソームに配合する際に、粒子サイズの増大化や、単層構造が安定しないという課題があった。そこで同社は、リポソームを構成する膜に新たな独自処方を施すことで、「単層リポソーム」に「ヒト型セラミド」を安定的に配合することに成功した。
次に、3次元皮膚モデルを用いて、3種の「ヒト型セラミド」を配合した「セラミド配合単層リポソーム」が、皮膚バリア機能の一つである肌内部の水分蒸散抑制機能に与える影響を検証した。その結果、「セラミド配合単層リポソーム」を添加した3次元皮膚モデルでは、従来の「セラミド非配合単層リポソーム」を添加した同モデルと比較して、水分の蒸散抑制能が約3倍向上したことを確認。この結果から、「セラミド配合単層リポソーム」が肌内部の水分蒸散抑制機能を向上させることが明らかとなった。
水分蒸散抑制機能が向上するメカニズムを調べた結果、「セラミド配合単層リポソームが角層細胞間脂質のラメラ構造の形成を強化し、肌内部の水分蒸散抑制機能を向上させたと考えられた。
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