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「A20遺伝子」異常が悪性リンパ腫に関与‐「炎症から癌」の発症機構解明へ

2009年6月3日 (水)

 「A20遺伝子」の異常が、MALTリンパ腫やホジキンリンパ腫の発症に関わっていることを、東京大学医学部附属病院キャンサーボードの小川誠司特任准教授らが突き止めた。A20蛋白質は、サイトカインや接着分子などの転写を調節して、炎症に働いているNF‐κBが過剰に活性化するのを抑制する働きを持っており、その異常によってMALTリンパ腫などが起きているケースがあることから、研究グループでは「分かっていなかった炎症と癌発症を結びつける成果」だとして、今後の研究の進展に期待をかけている。

 MALTリンパ腫はヘリコバクター・ピロリの感染や、シェーグレン症候群、橋本病などの自己免疫疾患による慢性炎症に合併して発症することが知られている。ただこれまで、炎症とリンパ腫発症を結びつける分子メカニズムは分かっていなかった。

 それを明らかにしようと研究グループでは、300例以上の悪性リンパ腫について、特徴的なゲノム異常の網羅的な解析を行った。その結果、異常の多くがNF‐κBの活性化によって起きていることを見出した。

 NF‐κBはリンパ球が炎症などによって外界からの刺激を受けると活性化され、リンパ球の分裂・増殖を促進すると共に、リンパ球の様々な機能を調節に働いている。研究グループでは、そのNF‐κBの活性化制御の異常がリンパ腫の発症に結びついているのではと、NF‐κBのネガティブフィードバック機構として知られているA20遺伝子に着目、異常がないかどうかを調べた。

 その結果、B細胞悪性リンパ腫の約12%の症例で、遺伝子欠失や突然変異によって、A20遺伝子の機能不活性化が起きていることを突き止めた。特に、A20遺伝子の不活化はMALTリンパ腫(21・8%)とホジキンリンパ腫(26・0%)で高頻度に認められている。調べられた他の悪性リンパ腫では、異常は稀だった。

 A20遺伝子の異常がMALTリンパ腫の発症に関係していることを確かめるため、A20遺伝子の変異によって不活化した悪性リンパ腫の細胞に、正常なA20遺伝子を導入することで、NF‐κBの活性が抑制されるかについても検討された。その結果、正常なA20遺伝子を導入することで、NF‐κBの活性化は強力に抑制され、それに伴って細胞増殖も抑えられ、腫瘍細胞が細胞死に陥る結果が得られている。

 それに対し、変異したA20遺伝子を導入した場合では、そのような現象は観察されなかった。同じような結果は、マウスを使った系でも確認されている。

 A20遺伝子はNF‐κBが活性化されると直ちに、NF‐κB自身によって発現が誘導され、NF‐κB活性化している経路を強力に遮断するように作用している。NF‐κBの活性化が持続すると、サイトカインや接着分子などの転写が際限なく起こり、炎症の増悪に結びつくが、A20遺伝子はその火消し役を担っている。

 研究グループでは、それらの成績を踏まえて、「A20遺伝子が不活化した悪性リンパ腫の増殖は、外界からの炎症性サイトカインによる刺激に依存しており、これらのサイトカインを中和することによって、細胞増殖が抑制されたのではないか」と見ている。

 実際、ピロリ菌の除菌などによって炎症を治療すると、MALTリンパ腫も自然に消失することがしばしば経験されている。その場合でも、起きてしまったA20遺伝子の異常は修復されていないが、ピロリ菌の除菌などによって炎症が治まると、A20蛋白質が不活化されていても刺激自体が存在しないため、NF‐κBの活性化は起こらず、腫瘍は縮退するという臨床成績を反映しているのではとしている。

 その点では、炎症が関係している癌に対する抗炎症療法も期待されるところだ。特に、慢性炎症は悪性リンパ腫のほか、大腸癌、乳癌、肝癌などとも深く関わっている。研究グループでは「癌がどのようにして炎症という外界刺激に依存し、また利用しているかについての新たな視点を提供する成果で、今後、大腸癌などでの炎症を介した発癌メカニズムの解明が進むことが期待される」としている。




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