来年6月には骨子案
日本臨床救急医学会は、「救急認定薬剤師」制度の構築を進めている。今年3月の理事会で認定制度の発足を正式に承認。それを受け、このほど検討委員会を設置した。標準的な業務内容や認定要件など制度の骨格案を、今年末までに固める予定だ。2010年6月頃にそれを発表し、早ければ11年度から運用を開始する見通し。意識のない患者への薬剤管理指導業務が可能になった昨春の診療報酬改定を受け、ICUやCCU病棟でチーム医療に参画する薬剤師が増えている。その業務の標準化や質の向上を、制度構築によって後押しするのが狙いだ。
臨床救急医学会は、医師だけでなく、各医療職や消防機関に広く門戸を開いている。薬剤師については06年、多職種連携委員会の下に薬剤師ワーキンググループ(WG)を設置。救命救急領域に参画している現場の薬剤師が集まり、実態調査を実施するなど、様々な検討を行ってきた。 昨春の診療報酬改定以降、この領域で業務を行う薬剤師が増えた。こうした状況を背景に、以前から薬剤師WGなどで話題に上っていた認定制度の必要性の認識が高まってきたことから、日本病院薬剤師会との意見交換を経て、認定制度の構築を臨床救急医学会が担うことが決まった。
制度の骨格は、救急認定薬剤師制度検討委員会が年内をメドに作成する。委員長には、臨床救急医学会代表理事でもある有賀徹氏(昭和大学医学部救急医学教授)が就いた。有賀氏を含め4人の医師に加え、峯村純子氏(昭和大学病院薬剤部)ら5人の薬剤師など合計11人の委員を中心に今後、話し合いを進める。1回目の会議は5日に開かれた。
認定要件は、現在はまだ白紙の状態。基本的には、他学会の認定制度と同じように、▽学会の会員であること▽医療現場での勤務歴▽認定試験を実施しそれに合格すること――などを求めることになる見通し。救命救急領域で薬剤師が担うべき標準的な業務内容も、この委員会の中で構築する予定だ。
救命救急領域で、薬剤師が担う役割は幅広い。多種多様な患者が運び込まれるため、広範な知識が必要で、刻一刻と変化する体内動態に応じた処方設計を支援する役割もある。医療安全の観点からの関わりも欠かせない。こうした業務内容を標準化した上で、もし認定試験を実施するのであれば、その内容を試験問題に反映させていく。
認定制度の概要が年内に固まれば、10年6月頃をメドにそれを発表する。実際の認定制度の運用開始時期は未定だが、最も早い場合で11年度から、試験実施などが始まる見通しだ。
診療報酬改定によって、この領域に参画する薬剤師の数は大幅に増えていると見込まれる。現在、臨床救急医学会の会員は2703人。このうち薬剤師の会員は31人と少ないのが課題だが、認定制度に関心を持つ薬剤師は潜在的に多数存在すると見られ、認定制度の具体化に踏み切った。
有賀氏は、「救命救急医療に限らず、チームで医療を行うのが当たり前になっている。救命救急領域の患者は、容体が複雑だったり、あちこちの臓器が痛んでいたり、たくさんの薬を使わなければならなかったりする。そういう意味で、薬剤師のパワーは相当重要で、チームの重要な位置をなすと思う」と期待を語る。
他職種においては、看護師は以前から救命救急領域の認定制度がある。放射線領域では「救急撮影認定技師制度」の構築が進行中。制度を担う協議会を設立した上で、来年にも認定試験が実施される見込み。臨床検査技師は、制度構築の検討段階にある。