ニコンとニコンソリューションズ、NTT 東日本、東京大学病院、北海道大学らはこのほど、2023年から進めてきた「リモートバイオDXプロジェクト」で、臨床病理およびアカデミア・創薬分野における光学顕微鏡の遠隔操作について、操作性や運用面を中心に検証を行い、その活用に向けた実現性や有用性を確認した。また、東京都内での事前検証では、NTT東日本が提供するAll-Photonic Connect powered by IOWNを用いて、遠隔顕微鏡操作に必要なネットワークを構築できることを確認した。
同プロジェクト『リモートバイオDXプロジェクト「光学顕微鏡遠隔操作検証」』は、遠隔地から顕微鏡を操作できる仕組みの構築を通じ、場所に左右されない環境提供や研究機会の拡大を目指してきた。臨床病理分野における病理医不足や専門医偏在の深刻化、アカデミア・創薬分野における研究機器の高度化やデータの大容量・複雑化に伴う設備格差といった社会的課題を背景に、医療DXおよびバイオDXの推進に貢献することを目的として、約2年間にわたって取り組んでいる。
今回の検証の主な成果としては、昨年1年間取り組んだ臨床病理分野では、東大病院と北大間の直線距離約830kmを光回線で接続し、ニコンのデジタルイメージングマイクロスコープ「ECLIPSE Ui」を用いた遠隔操作を実施した。実運用を想定した検証環境で、8人の医師が操作性や通信遅延の影響、遠隔地からの病理標本観察としての適用可能性について評価を行った。
その結果、遠隔環境でも病理標本観察に不可欠な操作性・応答性・視認性が、直接操作する環境と同等に確保できた。術中迅速診断をはじめとした遠隔地からの病理標本観察に十分適用可能であることが確認できたほか、双方向での操作が成立し、快適な操作が可能との評価が得られた。
さらに、コミュニケーション手段として、NTT東日本の低遅延映像伝送システム「VBOLT」を併用することで、遠隔操作の円滑化が図れた。音声に加え、顕微鏡周辺の視覚・聴覚情報をまとめて共有することで、会話と機器の状態把握を相互に遅延なく実施できる環境を実現した。
今後に向けて、術中迅速診断、細胞診標本の遠隔診断、専門医同士のコンサルテーションなど複数のユースケースでの活用の可能性、遠隔地からの病理標本観察ネットワークの構築に向けた具体的な有用性が示された。
アカデミア・創薬分野に関しては、昨年12月と今年2月に実施した。ニコンの超解像顕微鏡「N-SIM」および共焦点レーザー顕微鏡「AX/AX R with NSPARC」を用い、固定サンプルおよび生細胞を対象に遠隔観察の技術的可否と運用面の評価を実施。臨床病理分野と同様、東大病院と北大を接続し、「VBOLT」によるコミュニケーション環境を構築した。
評価結果として、実運用を見据えるうえで重要となる視野の確保、顕微鏡の状態把握、遠隔用ジョイスティックの操作性、現場スタッフの役割など、運用設計に向けた具体的な改善ポイントが整理された。また、固定サンプルおよび生細胞のそれぞれに適した遠隔観察条件の整理が進み、今後の運用モデル作成につながる重要な知見が得られた。
今後、今回検証で得られた知見をもとに、拠点間の双方向コミュニケーション、撮像データの保存・転送・解析機能の追加など、より実用環境に近い構成への発展を進めていく。これにより、医療・研究機関の新たな連携モデル創出を促し、リモートバイオDX の社会実装を加速させていく。
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