第1類医薬品(第1類薬)の売上高が対前年比で3割近く減少。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が6月1日の改正薬事法施行後の実施状況を把握するため、会員企業を対象に行ったアンケート調査結果(速報値)からそうした状況が分かった。
アンケートによると、改正薬事法の施行で薬剤師しか販売できない第1類薬の売上高が、昨年同期から約27%減少。売上高が減少した店舗は約6割で、増加したのは1割強だった。
減少した理由としては、▽販売店舗数の減少▽販売時間の減少▽販売方法による機会損失(商品認知の低下、露出不足、顧客の手間)――が挙げられた。調査は同協会の会員企業約190社を対象に6月末に実施し、発表時点で約6割から回答を得ている。
アンケート自体は、改正法施行からわずか1カ月足らずの段階で実施したもので、JACDS会員対象という限定的なものである。このため6月以降の第1類薬市場の実態を、そのまま反映したものとは言い切れないが、改正薬事法が、医薬品の販売に少なからず影響を与えている状況が垣間見えるものとして注目できる。
以前、社説でも触れたが、ドラッグストア店頭では6月以降、第1類薬の陳列は空箱対応で、購入者が薬剤師のいる相談カウンターに持ち運び、文書による情報提供を受けた上で、商品と交換するというパターンが散見される。購入者にとっては一手間かかり、購入を妨げる要因にもなり得る。
しかし、ドラッグストアがこれまで、店舗面積を拡大し、薬や化粧品以外にも様々な生活・日用消耗品のカテゴリーを増やし、セルフで販売する商品を取り込んできた。その過程で、一人ひとりの購入者に対して、対面販売することが馴染まない店頭が形成されてきたのかもしれない。そうした部分の改善も今後の課題になろう。
ドラッグストア関係者の中には、第1類薬の販売減について、「薬剤師不在時には販売を行わないよう徹底したことも要因の一つではないか」と逆説的に分析する向きもある。
新販売制度では、専門家による医薬品のリスク分類に応じた情報提供や、薬剤師や登録販売者、さらに一般従事者を区別する名札の着用、一般薬を販売しない時間帯の陳列場所の「閉鎖」なども求められている。
そうした中、厚労省は今年度新規事業として「医薬品消費者相談等体制整備」(2600万円)を計上。同事業では消費者モニターが薬局などで覆面調査を行い、運用状況などで不適切な販売実態があれば、各都道府県の相談窓口に情報提供した後、薬局にフィードバックし改善につなげるという取り組みをイメージしているようだ。モニターによる覆面調査などで、販売者側に一定の緊張感を持たせる狙いもあり、これら相談窓口に寄せられた情報を公開していく可能性もあるという。
新販売制度のスタートに伴い、医薬品小売業として改正法で義務づけられた内容をきちんと実践していくことは大切だ。
その一方で、生活者のセルフメディケーション推進に向け、薬局・薬店、ドラッグストアが、それぞれ専門家による医薬品の対面販売という付加価値を、いかに購入者に印象づけることができるかが今後のポイントになろう。