日本臨床薬理学会認定CRC制度委員会は、臨床研究に関わる上級専門職「シニア・クリニカル・リサーチ・プロフェッショナル」(SCRP)を認定CRC制度の中に設置し、早ければ2010年1月から運用をスタートさせる。SCRPの候補者は、日本臨床薬理学会会員であること、執筆・学会発表・講演等の活動を行っていることが条件。認定CRC制度委員会が適格性を審査し、最終的に理事長が委嘱する。ただ、SCRPは認定CRCを前提とはしていない。臨床研究に関わる全スタッフに門戸を開き、幅広い人材の受け皿となることを想定している。
CRCのステップアップ、キャリアパスは、以前から大きな課題として指摘されていたが、認定CRC以外にステップアップの方向は明確になっておらず、指導的な立場の認定CRCにとっては、認定後のキャリアパスが確立されていなかった。
昨年になって、初めて関係5団体がCRCのステップアップの図式として、「CRCのABCステップス」を提示。アシススタントCRC(ACRC)、関係5団体の養成研修を修了したビギナーCRC(BCRC)、日本臨床薬理学会認定CRC試験に合格したサーティファイドCRC(CCRC)が位置づけられた。
こうした中、認定CRC制度委員会では、さらに臨床研究の現場で多様なニーズが求められると判断。今回、認定CRC制度規則を改訂し、新たに「シニア・クリニカル・リサーチ・プロフェッショナル」(SCRP)を設置することで、CRCのステップアップの図式を完成させる。
規則では、SCRPを「臨床研究の領域において造詣が深く、将来、認定CRC制度の発展に寄与すると思われる者をSCRPとすることができる」と位置づけ、「SCRPは認定CRC制度委員会がその適格性を審査し、理事長が委嘱する」とした。委嘱は5年間とし、更新可能となる。
また、制度細則を改訂し、SCRPの候補者の条件として、1.日本臨床薬理学会会員でなければならない2.「日本臨床薬理学会年会」あるいは「CRCと臨床試験のあり方を考える会議」において最低3回以上、特別講演、教育講演、シンポジウム(パネルディスカッション含む)の座長または講演を行ったことのある者3.認定CRC制度の発展に寄与することが期待され、執筆、学会発表、講演、臨床研究を支援する活動等、CRCの育成活動を行っている者4.推薦書(認定CRC制度委員会委員2名からの推薦書を添付)--の4条件を明記した。
SCRPは、基本的に認定CRC制度の中に組み込まれるため、指導的立場のCRCにとってのキャリアパスと位置づけられるが、必ずしも認定CRCかどうかは問わない。
認定CRC制度委員会の中野重行氏(国際医療福祉大学大学院、大分大学医学部創薬育薬医学)は、「既に認定CRCは1000人を超えており、SCRPにステップアップする人が相当出てくるだろう」としながらも、「将来的には、行政や企業等からもSCRPとして活動してもらう可能性もある」と述べ、幅広い人材の受け皿としたい意向を示している。
「CRCのABCステップス」は、将来への行動を起こすための基盤作りも目的とされている。今後、最大の課題であるCRCの身分確立に向け、臨床研究に関わる専門職としてのSCRPの役割が大きなカギとなってきそうだ。