日本新薬は17日、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の新規治療薬「マシテンタン(一般名)」について、スイスのアクテリオンとライセンス契約を結んだと発表した。マシテンタンは現在、海外で第III相臨床試験が進行している。国内でも既に第I相臨床試験が終了しており、今後、第II相臨床試験以降の開発を、両社が共同で行う。承認を得た後は、両社が共同で販売する予定だ。
マシテンタンは、組織特異的エンドセリン受容体デュアルアンタゴニスト。血管内皮細胞から分泌されるエンドセリンの血管収縮作用や血管平滑筋細胞増殖作用を抑えることで、PAHの治療に効果を発揮すると期待されている。
基本的な作用機序は、アクテリオンが世界各国で販売し、年間1000億円以上を売り上げるPAH治療剤「トラクリア錠」と同じ。海外での第III相臨床試験は2008年から始まった。通常1日2回投与のトラクリア錠に対し、1日1回の投与で済む長時間作用型薬剤として開発が進んでいる。
今回の導入によって、日本新薬は力を入れてきたPAH治療剤の領域を、さらに強化したい考えだ。
PAHの薬物療法では、従来のカルシウム拮抗薬やジギタリスなどに代わって、エンドセリン受容体拮抗薬やプロスタサイクリン(PGI2)受容体作動薬、ホスホジエステラーゼV(PDE‐V)阻害薬が汎用されている。
日本新薬はこれまで、自社創製のPGI2受容体作動薬「NS‐304」を08年4月にアクテリオンに導出。海外では第III相臨床試験が進行中で、両社が共同開発する国内では、遅くても14年までに承認申請を行うべく、第II相臨床試験の準備段階にある。
また、09年12月には、イーライリリーから導入したPDE‐V阻害薬「アドシルカ錠20mg」(一般名:タダラフィル)を、国内で新発売した。
開発中の2剤を上市にまでこぎつけられれば、日本新薬は、臨床現場で汎用される作用機序の異なる3種類全てのPAH治療剤を確保でき、この領域で優位に立てると見込んでいる。