バイオベンチャーのカルナバイオサイエンスは、国立がんセンターと共同研究中の新規キナーゼ阻害剤について、2012年にも臨床試験を開始する。同社は研究テーマを癌領域に集中し、新規キナーゼ阻害剤を最重点プロジェクトと位置づけることで、重点的に経営資源を投入していく方針だ。第II相試験まで自社開発を進める予定だが、今後の交渉次第で大型導出も検討する。
キナーゼをターゲットとした創薬研究を進める同社は、08年6月に国立がんセンターと共同研究契約を締結。大腸癌のwntシグナル伝達経路を調節している新規キナーゼ「wnt‐K」を発見した山田哲司化学療法部長らの研究成果をもとに、wnt‐Kキナーゼ阻害剤の合成を進めてきた。
現在、wnt‐Kキナーゼ阻害剤はリード最適化段階にあるが、これまでの実験で強力な阻害活性と、高いキナーゼ選択性が認められている。また昨年には、科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援事業「A‐STEP」に採択され、上限で総額2億円の助成が得られる見通しとなった。
そのため同社は、キナーゼ創薬の重点研究領域として、癌領域にリソースを集中していく方針だ。特に国立がんセンターと共同研究中のwnt‐Kキナーゼ阻害剤を最優先プロジェクトと位置づけ、重点的に経営資源を投入して、12年の臨床入りを目指す。同時に、大型導出に向けた交渉も進める。
今後、創薬事業の長期的な展開として、重点領域の癌領域に関しては、第II相試験まで手がける自社開発戦略を進め、長期安定収入の確保を目指す。一方、他領域は、外部提携による共同研究と共に、同社が蓄積したキナーゼ創薬基盤技術を活用した、早期導出戦略を推進していく方針。
10年12月期は、研究開発費を前期の3億9100万円から4億4800万円(研究補助金含む)に増額し、キナーゼ阻害剤の研究開発を加速させる。