4月から、医療機関や薬局の窓口で、原則として全患者に明細書を無料発行することが求められる。薬局を含め、電子請求が義務づけられている施設が対象となり、薬剤師が65歳以上のみの場合や、レセプトコンピュータが電子請求に対応していない薬局は猶予される。
社会保険診療報酬支払基金によると、薬局の電子化率は、12月請求分で99・8%(レセプト件数ベース)に達している。設備更新やシステム改修が必要な場合の例外措置も用意されているが、多くの施設で対応が迫られる。
明細書では、初再診料や検査、投薬といった点数の小計を記載した領収書と異なり、個別の診療行為や薬剤名まで明示する。調剤の場合は、処方や調剤の内容を月日まで記載する。医療の透明化や、患者の医療に対する理解が進むことが期待されており、現行は、電子請求を行っている医療機関が、患者から要請があった場合に発行すればよく、実費徴収も認められている。
一方、昨年夏に中央社会保険医療協議会が行った特別調査では、病院の半数、診療所と薬局の4分の1で発行しており、このうち7割が無料だった。また、領収書を受け取った患者からは、治療・検査の内容や医療費の内訳がが分かりやすくなったことや、医師・薬剤師に質問・相談しやすくなったなど、前向きな回答が得られた。ただ、9割近い患者が発行を依頼した経験がないのが実態だった。
今回、診療報酬改定の一環として療養担当規則を改正し、「領収書を交付するに当たっては、正当な理由がない限り、当該費用の計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を無償で交付しなければならない」と定める。
「正当な理由」には、[1]明細書機能が付与されていないレセコンを使用している[2]自動入金機で明細書を発行するために機器の改修が必要――の二つの考え方がある。いずれかに該当する場合には、発行が免除されたり、実費の徴収が認められる。ちなみに、調剤ベンダ20社で、明細書発行に対応しているのは14社。このうち、手間がかからずに印刷可能なのは6社だという。
なお、各医療機関や薬局では、明細書発行の手続き、費用徴収の有無、費用徴収を行う場合の金額を院内掲示すると共に、地方厚生局に届け出る必要がある。正当な理由に該当する場合は、その旨や、希望する患者には明細書を発行することも明示しなければならない。
また、患者から明細書の発行を断ることができる余地も残し、会計窓口に「明細書を希望しない場合には申し出て下さい」と掲示し、患者の意向を確認できるようにする。
レセプト電子請求を行っていない医療機関には、明細書発行の義務はないものの、発行の有無、手続き、金額を掲示するよう求める。ただし、オンライン請求や明細書の無料発行に取り組む診療所については、電子化加算を廃止した上で、再診料に1点を上乗せできる「明細書発行体制等加算」を新設して評価する。
このほか今改定では、処方せん、調剤レセプトの様式を一部見直し、▽都道府県番号▽点数表番号▽医療機関コード――の記載欄を加える。9月までは現行様式でも使用できる。