海外大手製薬企業の2009年度決算が出揃った。米国勢は、トップのファイザー、メルクが大型買収の効果で収益を確保。ブリストル・マイヤーズ・スクイブもバイオ医薬品に事業を集約化した効果が表れ、好業績となったが、ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門は特許切れの影響が大きく、明暗が分かれた。一方、欧州勢は、新型インフルエンザの世界的な流行を受け、ワクチンをはじめ関連製品群が急伸。さらに、日本と新興国市場で軒並み売上を伸ばすなど、好調な決算となった。
スイス・ロシュ
新型インフルエンザの流行に伴い、抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」の備蓄が急増した結果、売上高は8%増の490億5100万スイスフラン(CHF)となったが、純利益はジェネンテックの完全子会社化に伴う統合費用が膨らんだ結果、大幅な減益となった。
医療用医薬品事業の売上高は、8%増の389億9600万CHF。売上の半数を占める癌領域製品は、転移性大腸癌治療薬「アバスチン」が21%増の62億2200万CHFと大幅に伸長。抗体医薬品の悪性リンパ腫治療薬「マブセラ/リツキサン」は6%増の60億8700万CHF、転移性乳癌治療薬「ハーセプチン」は8%増の52億6600万CHFと、主力製品群が堅調に推移した。
変動の大きい「タミフル」は、新型インフルエンザの世界的な流行を受けた大幅な需要増に加え、パンデミックに備えた供給増が発生したことから、約6倍増の32億CHFとなった。
ただ、利益面では、ジェネンテックの完全子会社化に伴う統合費用が膨らみ、純利益は22%減の85億1000万CHFとなった。
英グラクソ・スミスクライン
英グラクソ・スミスクラインは、米国で落ち込みを見せたものの、新興国、日本で20%以上の伸びを示し、売上高は3%増(恒常為替ベース)の283億6800万ポンドとなった。
医療用医薬品事業は、2%増の237億1400万ポンド。糖尿病治療薬「アバンディア」シリーズは、心リスクの警告が影響し、16%減の7億7100万ポンドと落ち込んだが、主力の気管支喘息治療薬「セレタイド/アドエア」は、日本と新興国が牽引し、5%増の49億7700万ポンドと堅調に推移した。
ワクチン事業は、新型インフルエンザ流行を受けたパンデミックインフルエンザワクチンの需要増、子宮頸癌予防ワクチン「サーバリックス」、小児感染症予防ワクチン「ロタリックス」の好調によって、30%増の37億0600万ポンドと大幅に売上を拡大し、増収に貢献した。
営業利益は、アバンディアの訴訟関連費用の影響はあるものの、HIVに特化した米ファイザーとの合弁会社設立、研究開発費や販管費の削減などにより、4%増の84億2500万ポンドと大幅な増益となった。
スイス・ノバルティスファーマ
医薬品事業とワクチン・診断技術関連事業が好調を維持し、過去最高の業績を更新した。
売上高は、7%増の443億ドル。医薬品事業は、加齢黄斑変性症治療剤「ルセンティス」など新製品群が現地通貨ベース81%増と成長を牽引。主力の降圧剤「ディオバン」が6%増の60億ドル、慢性骨髄性白血病治療薬「グリベック」が12%増の39億ドルと伸長した。
また、オンコロジー事業は、骨転移治療薬「ゾメタ」、乳癌治療薬「フェマーラ」が10億ドル以上を達成し、14%増の90億ドルとなった。
ワクチン・診断技術関連事業は、昨年4月に発生した新型インフルエンザの世界的流行に対し、1億回分以上のワクチンを各国政府に供給した結果、パンデミックワクチンとアジュバントの売上高が大幅に拡大し、38%増の24億ドル、子会社サンドによるジェネリック医薬品部門は、価格引き下げが影響し、米ドルベースでは1%の減収となった。
営業利益は、販売増による売上拡大に加え、生産性向上効果が寄与し、11%増の114億ドルと二桁増益となった。
仏サノフィ・アベンティス
仏サノフィ・アベンティスは、主力製品の伸長に加え、ワクチン事業とジェネリック医薬品事業が大幅に拡大した結果、売上高は6・3%増の293億0600万ユーロとなった。
医薬品事業の売上高は、3・7%増の258億2300万ユーロ。主力の持効型インスリン製剤「ランタス」は、新型注入器「ソロスター」の利用拡大が牽引し、25・7%増の30億8000万ユーロ。静脈血栓症治療薬「レベノックス」は11・1%増の30億4300万ユーロと大きく伸ばし、抗血小板薬「プラビックス」は、欧州で後発品との競合を受けたものの、日本の売上増でカバーし、0・5%増の26億2300万ユーロと増収を確保した。
ワクチン事業は、季節性インフルエンザワクチンに加え、新型インフルエンザワクチンの需要が急増した結果、21・7%増の34億8300万ユーロと大幅に伸長した。また、ジェネリック医薬品事業は、約3倍増の10億1200万ユーロと拡大し、特に中南米、東欧・トルコなど新興国市場の成長に貢献した。
その結果、営業利益は14・2%増の111億5300ユーロ、純利益は11・0%増の78億4400万ユーロと二桁増益を達成した。
英アストラゼネカ
英アストラゼネカは、主力製品が伸長し、売上高は7%増(恒常為替ベース)の328億0400万ドルと増収を確保した。
主力の抗潰瘍薬「ネキシム」は、米国・西欧の落ち込みを日本と中国でカバーし、1%減の49億5900万ドルと横ばいを維持。抗精神病薬「セロクエル」は、徐放性製剤「セロクエルXR」の処方増により、12%増の48億6600万ドル。高脂血症治療薬「クレストール」は29%増の45億0200万ドル、喘息治療配合剤「シムビコート」も23%増の22億9400万ドルと、主力製品群が順調に売上を伸ばした。また、高血圧治療薬「セロケン/トプロール‐XL」は、後発品の市場撤退を追い風に、84%増の14億4300万ドルとなった。
営業利益は、増収に加え、業務の効率化などが寄与し、24%増の115億4300万ドルと二桁の増益となった。
関連リンク
- 【海外大手製薬企業09年度決算】買収・再編効果で収益増 ‐米国勢‐ (2010年2月23日)