東京都では「食」をめぐる近年の様々な課題に対応すべく、東京都食品安全審議会の答申を踏まえ、今年度から今後5年間の食品安全推進計画を策定した。05年に5カ年の計画として「東京都食品安全推進計画」を策定し、生産から消費に至る各段階で、各局が連携し全庁横断的に食品の安全確保に関する施策を推進してきたが、最近の食をめぐる重要な課題に対応すべく、新たな施策を盛り込み、改訂を行ったもの。
同計画では、新たな課題に対応するため、▽事業者のコンプライアンス意識を高め、自主管理向上のための施策の充実を図る▽健康被害の未然防止・拡大防止に力点を置いた施策の充実を図る▽食の信頼確保に向けた都民への情報提供の充実を図る――という三つの施策の方向性を定めた。そして、この方向性に即した九つの戦略的プランを重点的・優先的に実施することで、施策の着実な推進を図っていく考えだ。
二つ目の施策で戦略的プラン5として掲げられたのが『健康食品による健康被害の防止』で、都民に広く利用されている「健康食品」の安全を確保すると共に、正しい利用方法の普及啓発を進め、健康食品による健康被害の防止を目指す。
これまでにも、店頭やインターネット等で販売されている市販品の試買調査を実施し、内容成分や表示事項の確認を行ってきた。医薬品成分等の含有が疑われ、健康被害が懸念されるケースもあり、必要に応じて販売禁止等の措置を採ってきた。一方、製造・輸入・販売等を行う事業者に対しては、定期的に講習会を開催し、薬事法や食品衛生法など、健康食品に関係する法令の内容や違反事例を周知し、事業者の意識の向上を図ってきている。
さらに、健康食品の正しい利用方法などについて、講習会やDVD、広報誌などを活用して都民に広く普及啓発すると共に、専用サイト「健康食品ナビ」を通じ、最新の注意情報などを随時発信し、健康食品による健康被害の未然防止に努めてきた。こうした一般に向けた積極的な普及啓発事業は、地方行政からも注目を集めている。これら従来の取り組みを一層充実していくことが、まず期待される。
都では、学識経験者で構成する「健康被害事例専門委員会」を設けている。都の食品安全情報評価委員会の下に設置された専門委員会で、都医師会、都薬剤師会を通じて収集した「健康食品」との関連が疑われる健康被害情報等の疫学的な分析・評価を行ってきた。
必要に応じて医療機関等に情報提供を行い、健康被害の拡大防止を図るという同専門委員会の活動も、戦略的プランの中では重要な位置づけとなっており、薬局・ドラッグストア店頭を通じ、従来以上の情報収集と提供が欠かせないといえる。
都では同計画について、戦略的プランを中心に進捗状況などを年度ごとに食品安全審議会へ報告すると共に、計画の中間年度に広く都民に公表し、着実に計画を実施していく方針だ。
食の安全確保の推進に向け、行政、事業者、そして都民などの関係者が互いの役割を理解し、連携していくことを強く望みたい。