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6年制教育、新たな薬剤師に期待

2010年05月07日 (金)

 今年のゴールデンウィークはどのように過ごされただろうか。夏の参議院選挙を前にした、“迷走中”の今のうちにと、渋滞などものともせず、車で全国各地へと出かけた方も多かったのではなかろうか。

 第二弾を迎えた事業仕分けでは、前回、世論の批判を受けたためか、地味目に推移したようにも映る。薬業界的によかったといえるのは、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の事業について規模拡大の方向で結論に達したこと。

 小資源国家の日本にとって、医薬品産業の育成・発展は必須。中国をはじめとする近隣アジア諸国が、わが国基幹産業である自動車、家電産業を物凄い勢いで追い上げている中で、医薬品開発については、何とかアジアの中でトップの座を保っている。

 とはいえ、この数年、ジェネリック医薬品の分野では、インド企業の進出が激しく、いずれ新興国がその産業の中心になる可能性は低くなかろう。やはり、先頭を走ることが肝要だ。

 前回の仕分けでは、「スーパーコンピュータの開発において世界一の必要性はない……」と近視眼的な感性による結論が、分野を超えた研究者から大きな批判を浴び、一般社会からもその感覚のズレが指摘された。極端にいえば事業縮小、廃止目的の仕分けの中で、PMDAに対する姿勢は評価されよう。

 ただ、開発なくして審査体制もなかろう。国際的なポジションからいっても、日本オリジナルの優れた医薬品開発が望まれる。ところがいま、新薬メーカーの“基礎分野”に対する目は国外へと向かいつつあり、政府与党においては、国内の基礎研究に対する視線は厳しいものがある。

 幅広い基礎研究の上に、厳格な応用研究・臨床研究が必要とされる医薬品産業にとって、国内での基礎研究が立ち枯れてしまえば、いずれ明治時代のように医薬品は皆、外国から買う羽目になってしまう。こういう状況に陥れば、「何のために6年制薬学教育を立ち上げたのか」という議論にまで遡ってしまう。

 野党も含め皆が賛成し、学校教育法および薬剤師法が改正され、6年制薬学教育がスタート、5年目を迎えた。今月から長期実務実習に“薬剤師の卵”たちが挑む。そして2年後には、初の6年制薬剤師が輩出される。

 思い起こせば、6年制の目的は、医療技術や医薬品の創製・適用における科学技術の進歩、医薬分業の進展などへの対応であった。

 基礎的な知識・技術はもとより、豊かな人間性、高い倫理観、医療人としての教養、課題発見能力・問題解決能力、現場で通用する、実践力などを身につけた人材が得られるものとの期待もある。

 誤解を恐れずにいえば、かつての4年制の時代、薬学は「創薬」を掲げつつも、人を見ずして研究を進めてきた。今、新たな「問題解決型の薬学教育」では、臨床現場を経験し、医療に接した上で、より高度な薬学が目指されている。これまでと違った、日本独自の基礎あるいは応用研究の展開も期待されよう。

 確かに、事業仕分けでの研究費配分等の指摘で当たっている部分はあろう。だが、成果が得られにくい基礎研究なくして、優れた医薬品開発は達成できない。政府主導の医薬品産業育成が望まれるが、その際には、新たな薬学を学んだ人材が、成果を生むものと期待される。



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