大阪の産学官のトップで構成する「大阪バイオ戦略推進会議」は、「大阪バイオ戦略2010」を発表した。2018年に北大阪バイオクラスターを中核とした大阪を世界第5位にする目標に向け、08年、09年に続く重点取り組みをまとめたものだ。
これまでの注目される成果の一つに、今年3月に設立された「大阪バイオファンド」がある。大阪発の革新的な医薬品、医療機器の創生を目指し、大阪府、大阪産業振興機構、中小企業基盤整備機構のほか、在阪拠点を持つ医薬品メーカー、医療機器メーカーなど23団体が出資している。大阪の産官学の「オール大阪」で有望なベンチャーや投資案件の発掘を行い、評価や目利き、事業化までトータルで成長を支援することを目的としている。
設立時の出資総額は、当初目標の10億円を上回る11億2000万円。地方自治体と関連業界が一体となって組織するファンドは全国初の試みだ。同ファンドは、一昨年の大阪バイオ戦略会議で、ベンチャー支援を通じ大阪ならではの仕組みができないかという議論からスタートした。 まずはバイオ分野、特に医薬品や医療機器に取り組む有望なベンチャーや企業の支援を打ち出した。大学や研究機関などの先端的バイオ分野の研究シーズの提案を受け、それらを実用化に導く役割も期待される。
また、大阪・関西を世界トップレベルのバイオクラスターとするための戦略的ファンドとして寄与するため、優れた開発力・技術力・事業性を持つバイオ・ライフサイエンス関連のベンチャー・中小企業に投資し、事業連携・新事業展開などのハンズオン支援を行うことで、その育成と成長促進を図る。
大きな特徴は、大阪産学官ネットワークが組合員と連携しながら、投資先のバイオ中小企業、ベンチャー企業を支援していくという点。製薬企業などの組合員は、ファンドへの出資だけではなく、支援も行う。
投資対象分野は、幅広く捉え医薬品、医療機器、医療関連サービス、機能性食品など、バイオ・ライフサイエンス関連のベンチャー中小企業に設定。総投資額の50%以上を大阪府内に本社や営業・研究拠点があるか、今後、設置予定の企業、さらに70%以上を日本国内に本拠を置き、国内で事業を行う企業を主な対象とし、投資先企業に対しては最終的に、投資回収としてIPOやM&Aなどにつなげるという。
一方で、課題も少なくない。バイオベンチャー(BV)に限っていえば、今から約10年前に国内で初めて設立されて以降、現在約600社の企業が存在する。しかも、この10年間で上場に至った企業は20社ほど。
BVビジネスは、最終的な創薬につながるかという意味では、低い成功確率で一握りのベンチャーのみが高い成果を生むという結果が、この10年間でも見て取れる。
大阪バイオ戦略のロードマップでは、10年後に北大阪バイオクラスターを世界第5位の規模に到達させようという最大の目標があるが、BV支援では、それほど悠長に構えてはいられないはずだ。
同ファンド設立は、優秀なBVの大阪への誘致という側面も兼ねている。
やはり、ゼロからの出発ではなく、これまでのBVの実績を踏まえたロードマップの作成も必要になろう。