
前川社長
日本新薬の前川重信社長は、14日の決算会見で、肺高血圧領域の成長に強い期待を示した。2009年12月に新発売した「アドシルカ錠」(一般名:タダラフィル)に加え、作用機序の異なる2剤が臨床開発段階にある。「将来的な戦略分野の一つ」と述べ、3剤のピーク時売上高を単純に合計すると200億円規模に達すると見通した。
この領域は国内患者数は推定約1万人と少ないが、オーファンドラッグとして高薬価を期待できるため、売上高にも貢献する。
自社創製品の「NS‐304」(一般名:セレキシパグ)の臨床開発が進行し、今年2月にはスイスのアクテリオンから「ACT‐064992」(一般名:マシテンタン)を導入。前川社長は「作用機序の違う3種を全て有することができた」と話し、パイプラインの充実を高く評価した。
「NS‐304」は海外で、導出先のアクテリオンが第III相試験を実施中。国内では、慢性血栓塞栓性肺高血圧症を対象とした第II相試験を、今年4月から開始した。肺動脈性肺高血圧症(PAH)を対象とした第II相試験は今年末から開始する計画だ。それぞれ15、16年の発売を見込み、ピーク時売上高は100億円前後に達すると期待を寄せる。
アクテリオンが世界各国で販売し、年間1000億円以上を売り上げるPAH治療剤「トラクリア錠」の後継品とされる「ACT‐064992」は、11年第2四半期頃から国内で第II相試験を開始する計画。海外で実施中の第III相試験データも活用しながら、14年の発売を目指す。ピーク時売上高は約70億円と予想する。
PAH治療薬の「アドシルカ錠」は11年3月期は8億円、ピーク時に約30億円の売上高を見込む。
昨年秋には、MRによる肺高血圧領域の情報提供を支援するチームを社内に立ち上げた。専門性が高い領域であるため、学術部門だけでなく、創薬部門や臨床開発部門の人材も含めて編成したのが特徴。大学病院や基幹病院に対するMRのマンパワーも増強し、この領域の成長に力を注ぐ構えだ。