今年の腸管出血性大腸菌感染症の累積報告数(今月11日現在)が、2000年以降の同時期としては3番目に多い。国立感染症研究所・厚生労働省が発表している「感染症週報」(第31週:2~11日)で公表され、食中毒の予防徹底などを呼びかけている。
腸管出血性大腸菌感染症の報告数は、今年も例年と同様に、第20週(5月31~6月6日)から増加し始め、第22~24週にかけて、三重県の中学・高校で大規模な集団感染事例(189例)が発生したことで、一時的に報告が急増した。その後いったん減少したが、第26週以降再び増加。100例を超える報告が続いており、第29週116例、第30週158例で、第31週は167例だった。
第31週までの累積報告数1910例は、00年以降の各年同期間の累積報告数と比較して、01年2406例、07年1986例に次いで3番目に多い報告数となった。その他の年は、1500~1800例で推移している。
第31週に報告があったのは167例で、有症状者が117例(70%)、無症状病原体保有者が50例(30%)だった。都道府県別に見ると、福岡県(19例)、東京都(17例)、三重県(16例)、岩手県(13例)、佐賀県(11例)からの報告が多かった。
佐賀県では、保育施設内でO103-VT1による集団感染が発生し、これまでに園児とその家族から計11例が報告されている。また、三重県では同じ部活動の高校生が、O157-VT1・VT2に感染し、第30週以降計10例の感染が報告されている。
性別では男性73例、女性94例。年齢群別では0~9歳57例、20~29歳32例、30~39歳23例、10~19歳22例の順に多かった。同感染症の重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症者はいなかった。
今年の第1~31週の累積報告数1910例について見ると、報告の多い都道府県は、三重県(270例)、福岡県(162例)、東京都(157例)、愛知県(138例)、大阪府(96例)。性別では男性897例、女性1013例。年齢群別では0~9歳509例、10~19歳408例、20~29歳296例の順に多い。
第26週以降、特に愛知県と三重県で食中毒事例が複数発生し、O157-VT1・VT2の報告数が増加している。また最近では、第30週から長野県と岩手県で、それぞれO26-VT1集団感染事例が発生している。
HUS発症者は累計で42例報告されており、性別は男性18例、女性24例。年齢群別では0~4歳25例、5~9歳3例、10~14歳3例、15歳以上11例となっており、幼児に多い傾向が見られいる。死亡例はこれまでに、2歳男性(O157-VT1・VT2、HUS発症)と90歳代男性(O157-VT1・VT2、HUS発症せず)の2例が報告されている。
感染症週報では、「毎年、腸管出血性大腸菌感染症の報告がピークとなる8月に入り、今後もその発生動向には注意が必要。食肉の十分な加熱処理などにより、食中毒の予防を徹底すると共に、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが重要」としている。