厚生労働省医薬食品局は、2011年度医薬関係予算概算要求の概要を公表した。要求額は106億4600万円で、10年度予算額に比べ3億6500万円、3・6%の増額となった。医薬品・医療機器の安全対策には今年度予算額の倍の約20億円を要求。日本のセンチネル・プロジェクトを推進するため、1000万人規模の医療情報データベースの基盤整備を行う事業には、政策コンテストで他府省と優先度を競う「特別枠」として11億0200万円を計上した。
医薬食品局の概算要求は、▽医薬品・医療機器の安全対策の推進(要求額=20億0700万円)▽医薬品・医療機器の承認審査の迅速化(12億5900万円)▽新型インフルエンザ対策(15億0400万円)▽安全な血液製剤の供給確保(4億7200万円)▽新たな一般用医薬品販売制度への対応(2億2400万円)▽薬物乱用対策の推進(2億4200万円)――の六つが柱。
安全対策関連事業で、最も大きなウエイトを占める「医療情報データベース基盤整備事業費」は、大学病院等5カ所に電子カルテ由来の医療情報を蓄積し、医薬品等の安全対策に活用するため、1000万人規模の医療情報データベースの基盤整備を行うもの。
また、薬害の発生や拡大を未然に防止するため、医薬品行政に関わる行政機関の監視・評価を行い、適切な措置をとるよう提言などを行う医薬品等監視・評価組織の運営費として、新規に1400万円を計上した。
この組織は、「薬害肝炎事件の検証および再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の最終提言が設置を求めている、「医薬品行政を監視・評価する第三者組織」を設置するまでの暫定的なもの。予算は主に検討会の運営費に充てられる。第三者組織の設置には、新たな設置法などの整備が必要で、準備に時間がかかるとされている。
国、医療関係者、患者とのリスクコミュニケーションを円滑に実施するため、医薬品の適正使用に関する情報の提供方法や情報ニーズを把握するための意見交換の場を設置・運営する費用として、新規に500万円を計上した。
承認審査の迅速化のための事業では、日本発シーズの実現に向けた薬事戦略相談の推進事業に「特別枠」として4億6400万円を充てた。日本発シーズの実用化のため、大学・ベンチャー等における医薬品・医療機器候補選定の最終段階から治験に至るまでに必要な試験・治験計画策定に関する相談を行う。
また、新薬開発を迅速化するために必要なガイドラインの整備にも、新たに500万円を計上した。
一般用医薬品の定着状況を把握するため、厚労省が今年度行った覆面調査は、次年度には客体数を増やすため、「医薬品消費者相談等体制整備費」として1100万円増額の2900万円を計上した。