2010年版MR白書がまとまった。今回は、3年に一度実施されている本調査の年に当たる。白書によると、10年3月末時点でMR業務従事者総数は、2年連続で増加して5万9712人となり、6万人に達する勢いだ。
加盟団体別で見ると、日本製薬工業協会で1154人(2・3%)減少したのに対し、日本ジェネリック製薬協会は144人(4・5%)増加、両協会以外の企業101社では1870人(40・2%)と大幅に増加した。
調査を実施した医薬情報担当者教育センターは、増加した背景として、CSO(MR派遣・業務受託企業)やジェネリック薬関連企業でMRを増員する積極姿勢が見られたほか、自社MR数を抑えてCSOの積極活用、ベンチャーの特殊薬だけを扱う企業の参入が増加している状況を説明した。
ジェネリック薬の使用促進、人材のアウトソーシング、そしてスペシャリティ医薬品の台頭を予感させる動きであり、製薬企業の新薬情報提供は、自社のMRだけが担うという時代が、既に過去のものとなったことを示唆する興味深い数字でもある。
MRの印象を聞かれれば、病院の廊下で待っているスーツを着た男性を思い描いてしまうが、最近では女性MRも増加しているようだ。女性MRは調査開始以来一貫して増加しており、今回の調査では8・0%増(男性1・4%増)と大きく伸び、7432人となった。特に、20歳代MRでは34・5%が、雇用規模1000人以上の企業では37・6%が女性である。
しかも、経験年数別で見ても経験年数5年未満が減少して、5年以上、10年以上のいずれでも女性MRが増加しており、女性の就業年数が長くなっていることを示している。センターは、「女性MRを生かせる職場環境をつくることは重要であろう。女性MRの活躍が、さらに期待される」とコメントしている。
もう一つの特徴的な動きとして、CSO(センター認定15社)に所属するコントラクトMRの増加がある。今回の調査では2375人となり、総数に占める割合が初めて4%に達した。センターは、「市場規模は順調に拡大し、CSO各社は癌、中枢神経系などの専門領域のMR育成に注力している。一時的な欠員補充などの役割から、派遣・コール要員、マーケティング・パートナーとしての機能が確立されてきたといえよう」と解説する。
白書の序文では、医師限定のサイトで行われた調査結果で、医師がMRに期待することについて、▽論文などの最新エビデンス▽医薬品の副作用情報▽同効他剤(他社製品)との比較データ▽医薬品処方の工夫――が上位だったことを紹介すると共に、1912年に始まったとされる日本におけるMR活動の歴史について触れている。
2012年にはMR誕生100周年を迎えることになるため、センターでは記念事業を企画して準備を進めている。「100周年の今、MRの社会的役割を再考する機会にしたい」との考えも示している。
医薬品は他の製品とは異なって、絶対に情報と一体でなければならない。時代が流れ、環境がいかに変化しても、この原則だけは不変だ。今後も、医薬品の適正使用情報を提供するMRに対して寄せられる期待は大きく、比例してその使命と役割は重い。