HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)の予防対策を目指し、政府が設置した「HTLV-1特命チーム」は20日、総合対策を取りまとめた。妊婦の抗体検査実施や感染者の相談支援、標準的な検査方法の開発、普及啓発などを重点項目として挙げた。また、研究開発の推進も提言され、厚生労働科学研究費補助金を大幅に拡充することなども盛り込まれた。
HTLV-1ウイルスの感染者は、約100万人以上と推定されており、発症した場合、ATL(成人T細胞白血病)やHAM(HTLV-1関連脊髄症)など、重篤な症状を引き起こすが、未だ有効な治療方法は確立されていない。一方で、感染の6割を占めるとされる母乳を介した母子感染は、効果的な予防対策が確立しており、その全国的な実施に向けて一刻の猶予も許されない状況にある。
そこで、HTLV-1ウイルスの効果的な予防対策の検討を進めるため、総理指示に基づいた特命チームが今年9月、厚生労働省内に設けられ、これまで議論を重ねてきた。
重点対策は、▽感染予防対策の実施▽相談体制(カウンセリング)▽医療体制の整備▽普及啓発・情報提供▽研究開発の推進--が5本柱。
感染予防策では、▽全国的な妊婦のHTLV-1抗体検査実施体制の確立▽保健所におけるHTLV-1抗体検査の導入--に取り組んでいく。保健所における検査体制の整備では、併せて専門職による相談指導の実施も目指す。
相談支援(カウンセリング)では、妊婦健康診査で感染が明らかになった人を含め、HTLV-1のキャリアやATL・HAM患者に対して、診療に関する相談をはじめ、心理的・社会的な苦痛にも対応できる相談体制を構築する。このための研修会開催やマニュアル配布も行う。なお、相談体制の構築などには、患者団体等の協力を得て連携を図ることも盛り込んだ。
医療体制整備では▽精度の高い検査方法の開発▽診療体制の整備▽診療ガイドラインの策定--が示された。精度の高い検査方法については、標準的なHTLV-1のPCR検査方法等の開発について迅速に研究に取り組んでいく。
診療体制では、ATLに関しては医療連携の確立など、医療の質の均てん化を目指した診療体制を整備する。HAMでは、診療経験数が多いなど、地域で中核的な役割を果たす医療機関を中心にした、診療体制に関する情報を国や都道府県が提供し、患者が適切な医療機関にアクセスできるようにする。
研究開発の推進では、▽研究の戦略的推進▽HTLV-1関連疾患研究費の拡充--を行う。研究については、HTLV-1や、これに起因するATL・HAMについて、疫学的な実態を把握すると共に、病体解明から診断・治療など医療の向上に視する研究に取り組むよう、総合的な推進策を実施する。
重点対策のほか推進体制として、厚労省において「HTLV-1対策推進協議会」を開催することや、都道府県にHTLV-1母子感染対策協議会を設置することなども定めた。