OTC薬市場の活性化を重点目標の一つに掲げる日本OTC医薬品協会。しかし、協会関係者によれば、今年1月までの10カ月間で前年比95・8%という状況で、「今年は例年になく花粉飛散が多いということで、2~3月の関連商品の動きは活発化が期待されるが、3月までの累計で見ると、恐らく3年連続で前年割れといった形で終わるのでは」との声もある。
近年、社会環境や生活者の健康に関する意識、生活の質の向上など、OTC薬を取り巻く環境が大きく変化してきた。こうした中で、一昨年6月に施行された新販売制度によって、OTC薬に適切な情報提供が加わり、より安全・適正に使用できるセルフメディケーション推進への環境が整い、「OTC薬市場の拡大につながる基盤整備がなされた」との期待が高まった。
しかし、その後の状況はというと、景気停滞による消費マインドの低迷に加えて、スイッチOTC薬の承認・範囲の拡大も、当初の期待ほどは進展していないのが現状といえる。
OTC薬協の三輪芳弘会長ら協会幹部は1月の会見で、今年の取り組みについて、「これまで以上に、セルフメディケーションの普及・推進活動に注力し、業界の発展につなげたい」とした。その中で、提案の一つとして挙げたのが、セルフメディケーションと公的医療制度を連動させた新たな仕組みの導入だ。
高齢化が急速に進展するわが国では、今後も国民医療費が大幅に増加することが予測され、現行の医療保険制度の改革が余儀なくされている。そうした中で、例えば全てのOTC薬を対象とする新たな医療費控除の創設、そしてスイッチ化の加速などを考えてはどうか、というものだ。
さらに今年は、市場活性化と共に、OTC薬の有用性を明確にするための取り組みも予定している。協会では昨年、セルフメディケーション推進のためのプロジェクトを立ち上げた。この中で有識者10人以上のヒアリングを行い、「今年はいくつかの疾患について、有用性を裏づける調査研究を行っていきたい」とする。この調査研究の成果を発表することで、生活者の意識改革につなげることを目指す。
OTC薬協は、新販売制度のスタートを間近に控えた2009年5月に、四つの戦略目標からなる「OTC薬産業活性化ビジョン」を策定、発表した。ビジョンの期間は09年から14年までで、既存市場の活性化のみならず、新たなOTC薬市場を創成し、その数値目標として「生産額1兆円を超える産業を目指す」ことを挙げた。
取り組むべき戦略(行動)目標を改めて見てみると、▽OTC薬の役割拡大▽OTC薬の質・信頼性向上▽OTC薬の利便性向上▽協会機能の拡大・向上――であり、中には環境整備に進展が見られる項目もあるが、具体的な成果が望まれている項目も少なくない。
今年はビジョン策定から3年目となることからも、OTC薬協の新たな展開に期待したい。