
内藤社長
エーザイは3日、2011~15年度までの新中期戦略計画「はやぶさ」を発表した。急速なグローバル化に対応するため、前中計を1年前倒しで終了し、成長著しい新興市場の取り込みを加速させる。新中計では、東アジアを成長牽引役と位置づけ、米国中心の事業戦略から大幅に転換する方針を鮮明に打ち出した。最終年度の15年度には、世界医薬品市場の上位20カ国全てに進出し、売上高8000億円以上、営業利益2000億円以上を目指す。
エーザイは、11年度が最終年度の6カ年中計「ドラマティック・リープ・プラン」(DLP)を進めてきたが、「新興国、途上国中心のグローバリゼーション時代に適応するためには、しっかりとした対応策を打ち立てる必要がある」(内藤晴夫社長)との認識から、1年前倒しで5カ年の新中計を始動させることにした。
新中計では、成長著しい新興市場の取り込みを目指し、15年度までに未進出のカナダ、ブラジル、ロシア、オーストラリア、トルコ、ポーランド、メキシコ、ベネズエラの8カ国に、自社販売網を確立する。これにより、世界医薬品市場の上位20カ国全てに進出し、販売国を66カ国から114カ国に拡大させる。特に、リンパ系フィラリア症治療薬22億錠を、37カ国の患者に無償提供することで、一層の患者貢献を果たす。
地域戦略では、日本主導で東アジアの人材・経験を共有する構想を打ち出し、新たな拠点を東京に設立する。高成長が確実な中国市場では、ジェネリックやOTC医薬品にも参入し、15年度には東アジアの売上構成比を63%に引き上げる。新興市場では、官民連携で医薬品アクセスを拡大すると共に、絶対的低価格を実現し、急増する中間所得層に攻勢をかける。売上構成比は4%に高める。
事業体制は、主力品の特許切れを迎える米国で1600人弱から1000人強、欧州でも900人弱から700人弱に人員を削減するが、記者会見で内藤氏は「米国、欧州の重要性が弱まるわけではない」と強調した。
ポートフォリオ戦略では、重点領域を癌・てんかん・肝臓の専門疾患にシフトし、先進国や新興市場から幅広く成長機会を取り込む。特に癌領域は、大型化を期待する抗癌剤「ハラヴェン」を背景に、乳癌、卵巣癌など婦人科癌への集中的な取り組みを進め、15年度までに世界トップ10入りを目指す。
プロダクトクリエーション戦略は、バイオマーカーが同定されていない新規プロジェクトに着手しない方針を打ち出し、ターゲット特異的な「フォーカスメディシン」を推進する。
また、今中計期間中には、成長投資として約3000億円を用意し、重視する東アジア、新興市場での新ビジネスモデルの構築や、婦人科癌、中枢神経系の製品導入に積極活用していく。