11日の午後2時46分ごろに、東北地方太平洋沖で発生したマグニチュード9・0の東日本大震災は、岩手県沖から茨城県沖にかけて震源域約500kmに及び、東日本に甚大な被害をもたらした。
学校などの各避難所には、約55万人が避難しているとされるが、収容人数は限界に達し、水や食料、ガソリンなどのライフラインに直結する物資も大幅に不足している。
このような現況の中、被災地の医療機関では、医薬品不足が大きな問題になっている。医薬品を卸の物流センターから医療機関に配達する運搬車の、ガソリンが不足しているからだ。コンビナートが崩壊し、タンクローリーも入れない被災地でのガソリン不足は、日ごとに深刻さを増している。
被災地の医療機関では、1カ月の長期処方でも、2週間の分割処方するなどの工夫により、医薬品の安定供給に努めてきた。だが、医薬品が十分に搬入されない現状では、それらの工夫も限界に近づきつつある。
被災地での緊急用医薬品の供給は、必要な時間に、必要なところへ、必要な量を、いかにして早く届けるかが、最も重要なポイントとなる。
人命に直結する医薬品の安定供給を保持するには、当局が早急に、医薬品運搬車にも国の緊急車両と同様に、ガソリンを優先的に回す措置を講ずる必要があるだろう。
壊滅的な被害を受けて交通網が遮断され、車両による運搬が困難な地域への医薬品供給については、自衛隊と連携して、ヘリコプター輸送を考えねばなるまい。
一方、医薬品の集積所や救護所など非常時の医薬品供給において、薬剤師が果たす役割は大きい。日本薬剤師会では、11日に災害対策本部を設置して、被害に遭った関係薬剤師会と連絡を取り、状況把握に努めながら、支援策を練っている。
被災地に入る交通手段がない状況で、全国からボランティアや救援物資を募っても、被災地への的確な支援とはならない。二次被災の恐れもあるため、薬剤師は個々に動かず、政府や自治体などの方針に基づき、日薬などといった一つの組織として、有機的に活動していくことが必要ではないか。
日薬が支援の対象としているのは、宮城県、岩手県、福島県と、原発の影響で避難者が多い茨城県内の医薬品集積所と救護所だ。
薬剤師が救護活動に携わる場合、災害発生時からの時間経過によって、業務が変化することを認識しておかねばならない。
初期の段階では、大量に救護所に送られてきた医薬品の整理が重要となる。第二段階では、被災地の環境に応じた解熱鎮痛剤、感冒薬、止寫薬などの対象薬の収集や医薬品情報の提供。第三段階では、慢性疾患患者に対する服薬指導などが焦点となる。
第二・第三段階では、医師が処方したい医薬品が、救護所にない場合の代替薬の選択も、薬剤師の重要な使命となるだろう。
また、救護活動では、どうしても現場での服薬指導などに目が奪われがちになるが、医薬品の適切な供給も、薬剤師の大きな職能の一つであることを忘れてはならない。
被災地での医薬品安定供給の実現と共に、各医療従事者が互いの職能を発揮し合って、被災地を的確に支援する救護活動が展開されることを期待したい。