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息切れしない派遣体制確立を

2011年04月27日 (水)

 今年もゴールデンウィークが目前に迫っている。各旅行会社は、ゴールデンウィーク向けの旅行プランをネット上に所狭しと並べている。ただ、例年と違うのは、東北応援価格コース、被災者支援プラン、楽天イーグルスの観戦ツアー、宿泊代金の一部が義援金に――など、「がんばろう東北」「がんばろう日本」をテーマにした品揃えが目をひく。

 3・11の東日本大震災から1カ月半を過ぎ、浦安地区や北関東の被災地域などを除き、関東地方では概ね、従来の生活に戻りつつある。夜も街には、飲み屋の喧噪が滲み出し、沈み込んでいた気持ちも、以前よりは前向きになりつつあるのだろう。

 25日には運転を見合わせていた東北新幹線の福島・仙台駅間が再開、残るは仙台・一ノ関間だが、これもゴールデンウィーク初日の29日には復旧し、大震
災から2カ月を待たずして、全線が開通する予定だ。

 震災後、移動を高速道路のみに頼っていたが、空の便に続き、ようやく人の移動のための「主力」が現場に復帰する。喜ばしいことだ。柱や送電線が甚大な被害を受けた写真や映像が記憶に新しいが、復旧の技術力には、改めて感嘆せざるを得ない。

 日々のニュース映像などからは、被災地が立ち上がろうと努力をしている姿
が映し出される一方、福島県の被災地では、原発災害により“先の見えない避難生活”を余儀なくされている。

 4月に入ってから、福島県の避難所でボランティア活動を行った薬剤師の一人は、現場では「医者も地元の高校生も頑張っていたけど、(薬剤師の)仲間が一生懸命頑張っていて、胸を打たれた。ただ、他の地域では復興に入っているが、ここでは見通しが立たない。これほど長い戦いは初めて。連休が終わった段階で息切れしてしまうのではと心配だ」と語る。

 日本災害医療薬剤師学会の多田治専務理事は、現地でのコーディネータ不足が、効率的なボランティア活動に影響を与えていると指摘。また、4月以降の日本薬剤師会の派遣体制は、数確保に主眼があり、モチベーションの高さに対し懸念を示す。

 さらに派遣日数を短縮し、本人や送り出す側の負担軽減に配慮する必要性を強調する。街の薬局は、既に地域医療で必須インフラといえる。貴重なマンパワーを何日も欠いては、地域医療提供体制に支障を来しかねない。多田氏は、最終的に6カ月は支援活動が必要という。新潟県中越沖地震では4週間で打ち切られている。

 連休が明ければ、震災発生からまるまる2カ月。息切れしない派遣体制の見直しは必要であろう。また、被災県薬の財政問題への対応、ひいては当初の日薬予算・事業計画の見直しなども、次なる課題として挙げられる。影響の長期化を考えれば、「英断」が必要になるやもしれない。



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