インターネット等を介した医薬品販売は2009年6月の改正薬事法施行以降、第3類薬以外の販売が規制されていることは、医薬品販売に携わる多くの薬剤師にとって周知の事実のはず。現在は、法施行から2年間の経過措置として、離島等の居住者や同法施行以前からの継続購入者に限って第2類薬品の販売が認められているのみだ。
そうした中で、先月19日、大阪府薬務課が改正法施行後もインターネット上で、医療用医薬品(非処方箋薬)や第1類薬等を販売していた府下の業者(薬局経営者)に対し、刑事告発するという全国でも初めての対応がとられた。同薬務課が薬事法上の規定に違反するとし、当該業者に対して2度の改善命令を発したが、それに従わなかったというのが告発に至った理由だ。
この薬局の代表者は、10年以上前から会員制医薬品販売サイトを開設、継続してネットを介した医薬品販売を行っており、会員数は21万人に及ぶようだ。同薬務課によると、1日に200~300件の注文があり、その8~9割が医療用医薬品だったという。
現在、一般薬のネット販売規制緩和については、経過措置として一部で認められている第2類薬については、議論の遡上にある。しかし、薬局店頭での販売においても、薬剤師が対面により書面をもって情報提供が求められる第1類薬や、医療用医薬品については論外の状況のままだ。
また、一連の一般薬のネット通販規制をめぐっては、ネット通販業者から、改正法の施行以前に行えた行為が、施行後は規制されたことを無効として、行政訴訟を行う事例も出ている。そうした業者も、法施行を不服として、違法にネット上で医薬品販売を継続しているわけではない。法を遵守した上で、自らの主張を展開している。中身の是々非々は別にして、正攻法である。
現行法では、第1類薬も非処方箋薬も、販売時には薬剤師による対面の情報提供が求められるため、ネット通販できる余地はない。ただ、これに違反した際の罰則規定が設定されていないことも、この業者の行為を助長する形になったことは否定できない。
今回の件では、法律の編み目をくぐったような行為が、行政サイドの指導を超えたレベルの事案となり、大阪府としても刑事告発という形で、司法判断に委ねざるを得なかったものと思われる。
法施行以前は、第1類薬に該当する医薬品や、薬剤師が販売できる医療用医薬品(非処方箋薬)に関してグレーゾーンではあったが、インターネットなどを用いた郵便販売等は規制を受けていなかった。しかし、現行法下では、明らかに違法行為である。今は、捜査の行方に注目したい。