2 0 0 8年度から各都道府県で毎年実施されている登録販売者試験。試験合格者は登録販売者として、勤務する店舗のある都道府県で、販売従事登録を行うことで、薬局、薬店で第2類、第3類の一般薬を販売することができる。
改正薬事法完全施行から2年が経過した現在、業界でも「登録販売者」という呼称がかなり定着してきた。しかし、その資質については『試験合格』のみに委ねられている部分が少なくない。
現行薬事法上、登録販売者自身には試験合格後、研修等の義務は課せられていない。体制省令に基づき薬局開設者や医薬品販売業者には、登録販売者に対する研修の実施が義務づけられているだけだ。また、その内容も「研修の実施が講じられていること」とされているだけで、具体的な研修の方向性や内容については規定されていない。
他の販売業でも一定の資質は必要だろうが、こと医薬品は使用方法を誤ると重大な健康被害を生じる恐れがあると共に、副作用リスクを伴うため、購入者への適切な情報提供や相談対応が重要になる。しかし、厚生労働省が実施した「一般用医薬品販売制度定着状況調査」では、薬剤師や登録販売者による、適切な情報提供が行われていない実態なども明らかになった。
試験で基礎知識の確認はできるが、日進月歩の医薬品の知識、購入者が必要とする情報提供、相談対応を行うには法遵守はもちろん、日々の研修は必要不可欠だ。
こうした中、大阪府は府薬事審議会・専門委員会で現在、登録販売者の資質向上対策などについて検討を進めている。中身は、▽登録販売者に対し、OTC薬販売の専門家として求められる購入者への情報提供や相談対応のあり方▽登録販売者の資質向上等を図るための研修体制構築▽資質が不足した登録販売者への対応策等の問題――などで、来月開催の府薬事審へ答申する予定だ。
都道府県行政レベルで、登録販売者の資質向上策に取り組むのは全国初。府では秋以降に、答申内容に基づく具体的な行政施策を実行するための検討会を開催。そこでは具体的な登録販売者の研修内容についても協議する考えだ。
現在、登録販売者の研修については、関連薬業団体が会員を対象として研修会を実施するものの、従来の業界の枠を超えた異業種からの参入もあり、登録販売者全体を横断的に統一した研修体制は構築されていない。さらに、事業者全てに一定の質を担保した研修の実施を求めることが困難という状況もある。
今年度中に10万人を超える見込みの登録販売者。医薬品販売専門家としての資質向上が、国民全体の医薬品安全性の確保と適正使用の推進に寄与することは間違いない。