来春の診療報酬改定があと半年に迫った。12月には、改定の基本方針と、全体の方向性を大きく左右する改定率が決まる見通しだ。
日本病院薬剤師会は、今回の改定に向けて「薬剤師の病棟配置に関する評価」を最重点要望事項に位置づけた。
8月末に厚生労働省に提出した要望書の中で、▽薬剤師の病棟での業務によって薬剤関連インシデントの件数が減少する▽病棟での薬剤師の業務時間が増えるほど、診療報酬では評価されていない病棟業務に積極的に取り組む施設の割合が増える▽病床当たりの薬剤師数が多いほど、病棟での業務時間が増える――という点を主張。医療の質の向上、医療安全確保の観点から、チーム医療において薬剤師が主体的に薬物療法に参加する体制を確保するために、この評価を求めている。
前回の改定において薬剤師の病棟配置への評価は、あと一歩のところで実現に至らなかった。中央社会保険医療協議会の答申書には「薬剤師の病棟配置の評価を含め、チーム医療に関する評価について、検討を行うこと」との附帯意見が記載され、このテーマは今回の改定に持ち越された。これが実現の最後のチャンスになるかもしれないだけに、関係者は今後の議論の行方を、固唾を呑んで見守ることになるだろう。
近年、こうした一連の動向を反映するかのように、病院薬剤師の病棟配置や常駐化、薬剤師の増員は、全体的に進んだ印象がある。取材に訪れた病院や学会の報告で、そのような声を聞く機会が多い。
ある公的な急性期病院では今年に入って、薬剤師の大幅な増員を実現。手術部門や救急部門を含め、全病棟での薬剤師の常駐体制を築くことができた。病院の経営改善効果があるジェネリック薬を選び出して採用したことや、モデル病棟での薬剤師の業務内容などが、病院経営側から評価された。
また、公益性の高い私立病院では、薬剤管理指導業務の成果を院内のQCサークル活動で発表し、最優秀賞を獲得した。薬剤師を含むチーム医療によって医療安全に貢献したことも院内や学会で発表。薬剤師の業務内容は院内で認知されるようになり、人員は増えつつある。
ある中規模私立病院では、人員増を果たし、薬剤師の夜勤体制や全病棟での常駐化を実現した。「病院の経営側は人件費増を懸念し、薬剤師の増員に抵抗するが、様々なチーム医療に参画して役割を果たしていると、医師や看護師が薬剤師の味方になってくれる」と薬剤部長は話す。
薬剤師の有用性を積極的にアピールし、それが認知されると、診療報酬上の評価は十分でなくても、増員が実現している病院はいくつかある。他の病院でも、こうした事例を参考に、院内で働きかけを強め、増員や病棟常駐化を目指していくべきだ。今回の診療報酬改定が、その追い風になって欲しい。