大塚製薬とデンマークのルンドベックは11日、中枢神経領域の全世界を対象とした提携契約を結んだ。両社は、大塚が後期開発中の抗精神病薬「アリピプラゾール持効性注射剤」や「OPC‐34712」の共同開発・商業化を進めることで合意。ルンドベックは大塚に対し、契約一時金として2億ドル、総額で最大18億ドルのマイルストンを支払う。大塚は中枢領域に特化するルンドベックと提携することにより、抗うつ薬・抗不安薬の研究開発力、欧州や南米、新興国の販売地域をカバー。両社を合算した中枢領域の売上高は、世界第2位の規模に浮上する。同日、徳島市内で記者会見した大塚製薬の岩本太郎社長は、「アライアンスによって新しい中枢領域の切り口を開拓し、ビッグベンチャーを目指したい」と語った。
今回の契約対象は、大塚が後期開発中の「アリピプラゾール持効性注射剤」と「OPC‐34712」、ルンドベックが研究開発中の3化合物。これら最大5化合物について共同開発・商業化を進める。ルンドベックの3化合物については、大塚が「今後10年間にわたって後期開発に入るものを選ぶ」(岩本氏)とし、後期第II相試験の終了後に共同開発・販売契約を結ぶ権利がある。
「アリピプラゾール持効性注射剤」については、大塚がルンドベックに対し、米国で売上の20%、欧州主要5カ国・北欧4カ国・カナダでは売上の50%を分配金として支払う。開発費用も米国で80%、欧州では50%を負担する。日本を含むアジア9カ国・地域、トルコ、エジプトでは、大塚が権利を保有。その他の国は、ルンドベックが単独販売を行う。
また、「OPC‐34712」については、大塚がルンドベックに対し、米国で売上の45%、欧州主要5カ国・北欧4カ国・カナダでは売上の50%を支払う。開発費用は、一定金額まで大塚が費用を負担し、それ以上は両社で均等に折半する。
中枢領域を拡大‐欧州や新興国も補完
今回の提携は、主力の抗精神病薬「エビリファイ」の特許切れを前に、中枢領域で新規開拓を狙いたい大塚と、米国で存在感を高めたいルンドベックの戦略が一致。これにより、大塚が強みとする抗精神病薬の研究開発、北米・日本・アジアの事業基盤に、ルンドベックが強みとする抗うつ・不安薬の研究開発、欧州・南米・新興国の事業基盤が加わり、幅広い中枢領域と全世界をカバーする体制を構築した。
岩本氏は、「ルンドベックは最もイノベーションを起こせる最高のパートナー」と高く評価。一方、ルンドベックのウルフ・ウインバーグCEOは、「大塚との提携は、うつ病や不安症以外の他分野に進出する大きな意味がある。共通点が多い両社の関係によって、お互いの強み、領域を深めていきたい」と語った。
ルンドベックは、中枢領域に特化したデンマークの製薬企業。抗うつ薬、抗不安薬の売上高では世界トップシェア。売上構成比は欧州が53%、南米など新興国が20%を占める。