総合化学メーカーのカネカは、脂肪幹細胞を使った乳房再建などを手がける再生医療ベンチャーのバイオマスター(BM、本社横浜市)を買収した。BM社が発行する株式の83%を取得し、子会社化することで、再生・細胞医療分野の事業拡大を目指す。
BMは、構造改革特区法に基づき、「かながわバイオ医療産業特区」に国内唯一の株式会社診療所を運営する東京大学発ベンチャー。幹細胞を使った脂肪注入手術(CAL)を行う専門クリニック「セルポートクリニック横浜」では、東大形成外科などとの共同研究により、患者の脂肪組織から得られる脂肪幹細胞を用いた乳癌治療後の乳房再建、顔面変性疾患の治療を手がけている。
一方、カネカは、再生・細胞医療市場は成長が期待され、2020年の国内市場が1200億円規模に成長すると予想。09年に血液浄化用吸着体事業で培った技術や医療用製品の設計・製造などのノウハウを生かし、再生・細胞医療分野に参入。間葉系幹細胞分離デバイスの販売を開始したほか、分離デバイスと自動培養装置の一貫したシステムも開発するなど、同分野での事業展開を急いできた。
さらに今回、CAL法の高度な再生・細胞医療技術と治療実績を持ち、細胞調製室などの充実した設備を保有する再生医療ベンチャーのBMを買収することにより、脂肪由来の幹細胞に関連する技術や製品開発を加速させると共に、自社の細胞分離・培養技術、製品開発の拡充に活かしたい考え。20年に同分野で売上高500億円を目指す。