幻覚作用を有する薬物を混在させ“合法” と称する“脱法ハーブ”を店舗販売するケースが全国的に広がっている。“脱法ハーブ”の危険性は、一般の報道などでも大きくクローズアップされているが、販売店では“脱法ハーブ”を乾燥させた植物片に加工し、「匂いを楽しむ」ための「お香」などとして販売しているようだ。
そうした中で、“脱法ハーブ”の吸引が疑われる健康被害も頻発。先月6日には名古屋市で“脱法ハーブ”の吸引が疑われる20代男性の死亡事例が発生した。吸引と死亡との因果関係は明確ではないが、愛知県では“脱法ハーブ”を販売する県下33店舗を対象に、違法な販売方法の実態がないか立ち入り調査を実施。今後も調査を継続するなど、監視を強化する方針だ。
さらに、福岡県では北九州市内の販売店で、買い上げで入手した違法ドラッグの疑いがある製品のうち、試供品として提供を受けた1製品から指定薬物を検出。それを受け、今年1月11日に同店を所管する福岡県小倉北警察署に薬事法違反(指定薬物の製造等の禁止)で告発した。1月26日には警察が販売業者の家宅捜索を行った。
告発した福岡県医療介護部薬務課は、販売店の経営者、仕入れ先等の実態を把握することが行政調査では困難なことが多く、司法権を持つ警察に実態解明を委ねることで、違法ドラッグ販売の抑止力になることが期待できるとしている。同県は、買い上げ調査などで、指定薬物が検出された場合は、警察機関と連携を取り、告発を含め違法ドラッグの流通防止に努めていくという。
2007年施行の改正薬事法で、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物を「指定薬物」とする制度が導入され、現在68物質が指定されており、研究や医療等の用途を除き、製造、輸入、販売等が禁止されている。
ただ昨今、若者の間で使用されている“脱法ハーブ”に含有される麻薬類似物質が指定薬物に指定されると、規制成分の化学構造式の一部を改変、置換することで規制を逃れるという状況が続いていおり、現在も専門店舗やインターネット等を介して半ば公然と販売されているのが現状だ。
現在、厚生労働省は、指定薬物を含む監視・指導、取り締まり体制の強化に向け、従来の監視・指導が主体の薬事監視員よりも、一歩踏み込んだ取り組みが行えるよう犯罪捜査に実績のある麻薬取締官に、指定薬物の取り締まりまで捜査権限を広げられるよう薬事法を改正する方針のようだ。既存の化学物質個別の指定では、“いたちごっこ”の感は否めない。麻薬や覚醒剤のように、輸入や製造などにも迅速に対処することができれば、より指定薬物制度の導入効果が発揮できるはずだ。体制構築への取り組みが急がれる。