電子処方箋への薬剤師の関心が高まっている。
厚生労働省の「医療情報ネットワーク基盤検討会」は3月に報告書「電子処方箋の実現について」を策定。2~3年後を目処にe文書法厚生労働省令を改正し、処方箋の電子化を実現させる展望を盛り込んだ。
電子処方箋を義務化し全国で一斉に開始するのではなく、実施環境の整った地域から処方箋を電子化した運用が可能となるように、制度を整える方針が示された。
紙に記載されていた処方情報を電子化することで、薬局薬剤師にはどんなメリットがあるのだろうか。薬局窓口でレセコンに処方情報を入力する業務を省力化できたり、誤入力を防止できたりするなど、いくつかのメリットが考えられる。もちろん、これらは薬局にとって歓迎すべきことだが、医療全体の大局から見ればそれほど大きなメリットではない。
処方情報の電子化によるメリットよりも重要なのは、電子処方箋の仕組みを構築できれば、同じシステムを使って、病院や診療所と薬局間で、病名や検査値などを含めた医療情報の電子的な共有化を実現できる可能性があることだ。
医療機関など施設ごとに所有する医療・健康情報を、施設間で電子的に共有する仕組みはEHRと称される。電子処方箋はEHRの様々な機能のうちの一つだ。電子処方箋よりもむしろ、それと併行してEHRの構築や運用が本格的に推進される可能性があることに注目したい。
医療情報の電子的な共有化が実現すれば、薬局薬剤師は、医療の質や患者満足度の向上に今まで以上に貢献できるかもしれない。国内で実施された電子処方箋の実証実験でも、病名や検査値などを薬局薬剤師が閲覧できることの意義が強調されている。
現状では薬局薬剤師は基本的に、処方箋に記載された情報しか入手できない。病名や検査値を患者から聞き取る場合もあるが、精度に問題があるほか、全ての患者には実行しづらい。これらの情報の電子的な閲覧が可能になれば、患者の腎機能に応じた薬の減量を医師に助言したり、患者の問題点を抽出して課題解決につなげたりするなど、様々な役割を発揮しやすくなる。
将来、電子処方箋が運用されるようになっても、薬局薬剤師が情報をどこまで閲覧できるかは未知数だ。同検討会の「電子処方箋の実現について」では「医療機関間、医療機関―薬局間での情報の共有・共用化が進むが、情報をどこまで提供すべきか、また提供された情報をどこまで閲覧すべきなのかといった運用面での課題がある」とされた。
医薬分業への逆風が吹いている。今後も従来通りの調剤を続けるだけでいいのか。電子処方箋をきっかけに薬局薬剤師は、様々な情報を活用できる資質を身につけた上で、病名や検査値などの医療情報を閲覧できる環境の実現を求め、もっと声を上げていくべきではないか。