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新時代を迎えた上場企業の経営

2007年6月11日 (月)

 2007年5月は、日本の上場企業にとって転換点になったと思える。1日に三角合併が解禁となり、31日には迷走の果てにHOYAとペンタックスの経営統合問題が決着に動いた。これら二つの出来事だけでも、欧米ほど重視されてこなかったと指摘される企業統制、株主の重さを痛感させるに十分な示唆的内容を含んでいる。

 敵対的買収に用いられるとされる三角合併は、基本的には相手企業の同意が必要で、友好的な手段である。しかし、初めに敵対的TOB(株式公開買い付け)を行い、一定程度株を買い占め、役員を送り込むなどして、最終的には形の上で友好的に買収を進めることも可能である。

 買収防衛策の導入が医薬品・医療機器業界で相次いだのも、杞憂から来るものではないはずだ。以前から導入しているエーザイ、持田製薬に加え、川澄化学、参天製薬、日本新薬、日本ケミファ、小林製薬、みらかホールディングスが導入を決めた。

 防衛策を講じるまでには至ってないが、配当を増やした企業が例年より増えたのも、三角合併と無関係ではないだろう。防衛策導入企業も揃って増配した。

 株を買い漁る外資系ファンドが活発化している中、TOBをしかけられた時、命運を握るのは株主である。買収防衛による企業の維持だけでなく、株主にも配慮しつつ、バランスを取って企業価値を向上させるという意識を喚起したのが、三角合併解禁の効果ではないか。

 そうした企業の維持と株主への配慮のバランスが、いかに難しいかを見せつけたのが、HOYAとペンタックスの経営統合問題だった。

 昨年末に基本合意した合併に、合併比率の点から異を唱えたのは資産運用会社スパークス・グループで、ペンタックスの筆頭株主だ。社内でも合併に不満が噴出して当時の社長は解職され、合併は白紙となった。企業を維持しようという力が社内で働いていた。

 しかし、今度は筆頭株主が新経営陣に不満を呈し、この間にHOYAが提案したTOBに賛意を示した。ペンタックスは独自の経営計画を発表するも、筆頭株主も株式市場も評価せず、当初の「対等の精神」の合併は、HOYAのTOBにより、子会社となる形で決着することになった。合併白紙後、HOYAには敵対的TOBの意向があったが、社外取締役が難色を示したことで断念したとも伝えられている。

 この複雑な経緯に垣間見えるのは、両社とも社内経営陣だけでは成し遂げられず、筆頭株主、株式市場、社外取締役と共に事が動いたという点だ。これは、上場企業の意識改革を促す重要なケーススタディになろう。

 二つの出来事は課題を投げかけている。企業自身が考える企業価値と、株主、市場が考える企業価値との間にズレが生じないようにするため、社内外への十分な情報提供と対話。一旦は合意した事項に反旗を翻すことのないような取締役会のあり方、企業統制。きちんと意見を表明できる、より高い独立性を持った社外取締役の確保などだ。

 つまり、昨年施行された会社法の狙いとするところに、どう応え、具体的に体制を作り、取り組むか。企業経営は新しい時代に入ったと認識すべきだ。




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