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明るい兆しを確かな光に

2013年12月25日 (水)

 今年はアベノミクスによる経済効果、富士山の世界遺産登録、2020年の東京オリンピック開催決定など、久しぶりに明るい話題が世間を賑わせた。

 アベノミクスは、大規模な金融緩和や政策期待が功を奏し、株高・円安による資産効果や、企業・家計のマインド効果をもたらした。

 健康・医療分野も、アベノミクスの成長戦略の重点戦略として位置づけられ、世界最高水準を誇るわが国の医療関連技術やシステムを世界に展開するための施策が進められている。

 今年度の補正予算では、「成長による富の創出」の一環としてiPS細胞などを用いた再生医療研究の加速などに240億円を計上。安倍首相は、iPS細胞関連の研究を「経済再生の一丁目一番地」と位置づけ、10年間で約1100億円の研究支援を表明している。

 健康・医療分野に係わる産業育成による日本経済成長への寄与を目的とした「健康・医療戦略推進本部」の設置も閣議決定され、日本版NIHの総合戦略策定に向けての作業がスタートした。

 アベノミクスの成長戦略に加えて、10年度から試行された世界唯一の「新薬創出・適応外薬解消等創出加算制度」が3年余り経過し、一定程度のイノベーション促進効果を示している。R&D費税額控除も今年から費用全額の30%に改められた。

 医療関連産業分野を、日本の将来の基幹産業へと育成する道筋をつけるには、アンメットメディカルニーズを満たす画期的新薬創出以外に手立てはないと言って良いだろう。

 日本の製薬企業には、これらの施策を絶好の機会として捉え、ぜひ、世界に先駆けた革新的医薬品の創出を実現してもらいたい。

 一方、薬剤師にとっても今年は、将来を左右する大きな節目の年となった。一般薬のインターネット販売ルールなどを盛り込んだ改正薬事・薬剤師法の成立がそれだ。

 同法は、一般薬の99・8%のネット販売を認める一方、劇薬指定品とスイッチ直後品目は「要指導医薬品」という新たなカテゴリーを設け、薬剤師による対面販売を限定している。

 加えて、薬剤師の将来にとって注目すべきは、同法で医療用医薬品を含む薬局医薬品の対面販売が義務づけられたことだ。

 もし、一般薬のインターネット販売の全面解禁が認められ、これが皮切りとなってネット販売業者が狙う「処方箋薬のネット販売」へとつながっていけば、「安全性よりも利便性重視」の考え方が決定的なものとなる。そうなれば薬剤師職能、ひいては薬剤師の存在自体にまで影響を及ぼしかねないからだ。処方箋薬へのネット販売の影響を回避できた意義は非常に大きい。

 とはいえ、今回の改正薬事法・薬剤師法が、薬局や薬剤師にこれまで以上に地域の健康拠点としての役割を求めていることは、決して忘れてはならない。

 薬局・薬剤師は、一般薬の販売、院外処方箋の応需、在宅医療も含めて、これまで以上に患者・消費者への対応をしっかりと行い、その存在価値を国民に知らしめる必要があるだろう。そのためには、今年を表す漢字の「輪」の精神の下に、医師・看護師をはじめとする他の医療従事者との連携が不可欠になるのは言うまでもない。

 2013年は、製薬企業や薬剤師にとっても、明るい兆しが見えかけてきた。今後は、ぜひ、それを確かな光に変えてほしいと願ってやまない。



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