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多様性が「進化」する前提

2014年01月08日 (水)

 新年初めにいつも感じているが、今年は薬剤師や薬業界にとって転機となるような年になる気がする。

 政府の2014年度予算案も昨年末に決まり、いよいよアベノミクスの“第三の矢”となる「日本再興戦略」に盛り込まれた各種施策が動き出す。▽国民の『健康寿命』の延伸▽クリーン・経済的なエネルギー需要の実現▽世界を惹き付ける地域資源で稼ぐ地域社会の実現▽安全・便利で経済的な次世代インフラの構築――を戦略市場創造プランに掲げ、これら社会課題を世界に先駆けて解決することで新たな成長分野を切り拓いていく。

 また、これと表裏一体となって取り組む健康・医療戦略は、▽健康寿命社会の実現▽経済成長への寄与▽世界への貢献――の三つを基本理念としている。

 こうした戦略に沿って、14年度予算案では、医療分野の研究開発関連領域では厚生労働省や文部科学省、経済産業省、内閣府などの関連府省を横断的に結ぶ政策を司令塔となる「健康・医療戦略推進本部」を中心として展開していく。

 こうした総合的で多彩な施策に期待が持たれる中、昨年末に京都大学の山中伸弥教授が提出していたiPS細胞に関する基本特許1件が日本で成立したという、うれしいニュースが飛び込んできた。

 山中教授らは今まで、日本では5件の特許を取得している。海外では、米国、欧州、香港、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、シンガポール、イスラエル、南アフリカおよびユーラシアで成立している。

 5件の特許は、いずれも三つ(Oct3/4、Sox2、Klf4)、または四つ(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)の遺伝子、またはそのファミリー遺伝子といった限定された遺伝子を導入することが条件だったが、今回は、iPS細胞を作製することが可能と予想される候補遺伝子から適宜選択された遺伝子を導入することが条件となり、特に遺伝子の種類が限定されていないことから、より広範なiPS細胞を作製する方法を権利範囲に含むこととなった。これをもとに多様な研究が進み、日本発のiPS細胞を用いた医薬品や医療機器の開発に拍車がかかるものと期待される。

 一方、日本再興戦略では、一般薬のインターネット販売の実質解禁と薬剤師に“ムチ”が飛んだが、「セルフメディケーションの推進のために薬局・薬剤師の活用を推進する」と“アメ”がぶら下げられた。

 薬剤師がセルフメディケーションを考え、自分たちの職能とするチャンスがいくらもあったはずだ。医薬分業推進を錦の御旗に掲げ、調剤主流の経営に没頭した結果、そのチャンスを逃してしまった。

 薬局の経営形態はもっと多様であってもいいと思う。地域の特性などを考えながら、近くの薬局同士が機能分担を図ってもいいのではないか。多様性は「進化」を呼ぶ。多様性がないものは滅んでいくのが自然の摂理だ。薬局も薬剤師も、もっと多様性を発揮する時期が来ているのかもしれない。



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