中央社会保険医療協議会は12日、2014年度診療報酬改定案を答申。昨秋から始まった本格的な議論を経て、その概要が決まった。医療の質を低下させることなく、高齢者増に伴う医療費増を抑えたい国の方針が、色濃く反映された内容になった。
病床数をこれ以上増やさないための在宅医療の推進がその一つだ。薬局薬剤師に関係する項目にも、その方針がはっきりと示されている。
基準調剤加算1と同加算2はそれぞれ12点、36点に引き上げられた上で、同加算1の算定要件には、近隣薬局と連携した“24時間調剤”や在宅医療の体制整備が加えられた。同加算2には、自薬局単独での“24時間調剤”や在宅医療の実績、関連機関との連携体制整備が必要とされることになった。
在宅患者訪問薬剤管理指導料は、自宅など同一建物居住者以外の場合は650点に引き上げる一方、高齢者施設など同一建物居住者の場合は300点に引き下げられ、メリハリがつけられた。
さらに、質の高い在宅医療を提供するため、同指導料の算定には「薬剤師1人について1日5回に限る」という制限がつくことになった。
これまで大手チェーン薬局などは、高齢者施設の入居者の院外処方箋を一手に引き受け、可能なら同指導料も算定し、効率よく収益を上げることに力を入れてきた。点数引き下げと算定人数制限によって今後、その戦略の見直しを迫られるかもしれない。
一方、個々の患者宅への訪問が高く評価されることは、その時間や手間を考慮すると理にかなっている。
在宅医療への薬局の参画はまだ不十分と見られる。ハードルを上げ、アメも用意して、各地域で多数の薬局が在宅医療に参画できるように促したい国の意向が強く感じられる。他薬局の無菌調剤室を利用した場合の無菌製剤処理加算の算定も、今春から可能になる。
国は引き続き、在宅医療を推進する方針だ。在宅医療に参画する薬局が、診療報酬で評価される傾向は今後、さらに強まるのではないか。
未実施の薬局にとって、在宅医療への参画は急務だ。来局する患者のうち、薬の管理が十分にできていないと思われる患者に焦点を絞って、実際に自宅を訪問してみることを足がかりにしてほしい。
在宅医療への参画とは、地域の医師、看護師、ケアマネージャーらと顔見知りになって、地域医療を担う一員として認めてもらうことだ。人間関係を構築するまでに時間はかかるが、一度その輪の中に入ってしまえばはじき出されにくい。個人薬局にとってはそれが、大手チェーン薬局への対抗策になる。
薬局経営の観点だけでなく在宅医療への参画はなにより、臨床現場での経験を通じて薬剤師を成長させ、意識を高める機会になる。ひいてはそれが薬剤師職能の発展にもつながっていくだろう。