日本製薬団体連合会(日薬連)と日本一般用医薬品連合会(一般薬連)の共催によるシンポジウムが、このほど都内で開かれた。日薬連に昨年度設置されたセルフメディケーション推進タスクフォースと、一般薬連のセルフメディケーション推進プロジェクトによる初の協働事業であり、テーマには「セルフケアと健康寿命」を掲げた。
世界的にも注目を集める日本の超高齢化の流れ。その現状はというと、平均寿命は約80歳ではあるものの、健康寿命は約70歳と開きがある。真の健康長寿社会を推進するには、健康寿命を延伸させ、この約10年間をいかに短くできるかの施策、工夫が必須といえよう。今回のシンポは、これまで薬業界が提唱し続けてきたセルフメディケーション推進を訴えていこうという取り組みではあるが、さらに一歩踏み込んで、健康で過ごすための方法、健康対策として製薬産業全体として何ができるか、その使命と役割の認識と意思共有も大きな目的とした。
日本再興戦略において、わが国の健康寿命の延伸を実現するために、健康管理や予防サービスの充実を進めると共に、自己健康管理を支援することが明記された。薬業界をめぐっては、これまでグレーゾーン的な位置づけだった薬局等での自己採血検査が普及していく可能性が示されたほか、20年間も新しいものが出てなかった一般用検査薬を推進していく方向性も確認されるなど、ある意味で健康寿命延伸に向けたセルフメディケーション、セルフケアの環境が、また一つ整ったと言えなくもない。
東京都や徳島県の薬局店頭において、指先自己採血による簡易検査の機会を提供し、医療機関と緊密に連携しながら、糖尿病の早期発見・早期治療につなげていくプロジェクトでは、これまで約3年半の間に約3000人(糖尿病治療中の人は対象外)が指先HbA1cの自己検査を受け、3割近くが糖尿病あるいはその予備群の疑いで医療機関へ受診勧奨を行ったという。こうした取り組みの成果が、薬局等での自己採血検査のグレーゾーン解消につながったと言えなくもない。
先のシンポジウムで、小売側パネラーの発表によると、ドラッグストア利用者に最も便利な検査の場所はどこだと思うかを聞いたところ、「かかりつけの病院・医院」に次いで「ドラッグストア・調剤薬局」が挙げられた。一方で、検査薬の存在自体は大半が知らなかったという。
近年、健康志向の高まりは指摘されているものの、実は40歳以上世代の多くが健診を受けていない現状もある。今年度からは、健康づくり拠点薬局を全国に拡大していくことを目標とした“拠点薬局モデル事業”が進められる予定だが、受け皿の整備と共に「いかに生活者の意識改革、行動変容に結びつけられるか」という仕組みづくりも不可欠と言えよう。