2014年度の登録販売者試験が今月末から全国の都道府県で実施される。08年の試験開始から7年目を迎えるが、既に登録販売者の合格者数は延べで15万人に達している模様だ。全てが店舗での販売従事登録を行っているわけではないが、ほぼ薬局で勤務する薬剤師数に匹敵する数となっている。
登録販売者試験の初年度には全国で延べ6万人以上が受験し、4万人以上が合格した。各自治体の薬務主管課として初のマンモス試験となる中で、受験申請書類「実務経験(見込み)証明書」の偽造などの不正が相次いで発覚。中には企業ぐるみともとれる悪質な事例もあった。
厚生労働省は、こうした登録販売者試験の不正受験が後を絶たない現状下、受験資格の見直しを行う予定だ。現行の登録販売者試験の受験資格には、医薬品販売店舗での1年間(1カ月の勤務時間が80時間以上)の実務証明が必要。今回、この要件を廃止し、試験合格後に2年間の実務経験を経て、登録販売者となる形に変更するというもので、来年4月施行を予定している。
中身は、これまでの受験資格に必要な前付けの実務経験を、後付けで1年間増やすという格好だ。厚労省は6月9日にこれらを含む薬事法施行規則の一部改正省令案を公表し、先月8日までパブリックコメントを募集した。これまで同制度に対し、数度にわたり問題提起してきた薬害オンブズパースン会議も「実務経験証明書を求める人数を減らすことによって、各都道府県の担当者の事務処理上の負担を軽減するものに過ぎず、登録販売者の資質向上や不正受験の再発防止のための抜本的な改正とは到底評価できない」との意見書を提出。不正な実務経験証明が行われた場合の法的制裁や、外部研修の履修を資格継続の要件に加えるなどの追加を求めた。
不正は、多くのケースで内部告発的な情報提供に頼らざるを得ない。薬害オンブズパースンが指摘するように罰則規定がないことで、登録販売者試験そのものが軽んじられていたとも言える。
これまでにも書いたが、実務経験証明書を作成できるのは、薬事法上規定された医薬品販売事業者に限られる。そうした人たちが不正を働くプロセスにこそ、問題があるのではないか。この辺りに、明確なペナルティを設けるべきであることは言うまでもない。
09年6月施行の改正薬事法で、医薬品販売制度は大きく変わった。ただ、今回、その目玉でもあった登録販売者制度に対して、省令改正案をパブコメ募集という形だけで済ませ、受験資格を軽々と変更してしまうのは、あまりにも安易なやり方のようにも思える。既に15万人存在する登録販売者が、医薬品販売者として国民の健康づくりに寄与できる資質を担保するための環境整備が、まずは先決なのではないだろうか。