薬剤師のキャリア、価値観から設計
「今は、空前の薬剤師不足になっている」。キャリア・ポジション代表取締役の西鶴智香氏は現況をそう分析する。昨春の国家試験合格率が低かったため、新卒薬剤師の確保に狂いが生じた薬局は少なくなかった。転職に動く既卒薬剤師の数が減った影響もあって、地方の中小薬局などは薬剤師を確保できず、事業の維持が苦しくなっている。こうした背景から同社は今後、それぞれのキャリア設計に応じた薬剤師の転職を支援するとともに、各社の人事コンサルティングや社員研修、事業継承などにもさらに力を入れる考えだ。
薬剤師不足はここ数年、緩和されつつあった。しかし、薬学教育が4年制から6年制へと移行した空白の2年間の影響が残る上、昨春の国家試験に合格した新卒薬剤師数が見込みより少なかったことから一転、空前の薬剤師不足に陥った。
その一方で、転職を考える既卒の薬剤師の数は減っているとみられる。チェーン薬局や大手ドラッグストアは人事や育成制度を工夫し、薬剤師の定着率が高くなってきたからだ。
新卒採用も中途採用も、共に厳しいのが現況だ。その中で、薬剤師を採用できる会社とそうでない会社の“採用力格差”がますます拡大。薬剤師を確保したくても難しいため、大手チェーンなどに事業を売却する地方の中小薬局経営者が増えてきたという。
「事業を継続できる会社、事業を継続できない会社、現在の規模のまま事業を続ける会社という違いが、さらにはっきりしてきた」と西鶴氏は指摘する。
「事業を継続できる会社には引き続き薬剤師を紹介するし、事業の継承を望む会社にはそれを仲介できる。規模にこだわらず質を高めたい会社には人材育成や採用、評価制度などのコンサルティング、社員研修を行える。それぞれに応じたサービスを提供していきたい」と話す。
求人件数は増え、求職側の薬剤師にとっては現在、選択肢がたくさんある状況だ。転職を考える薬剤師に向けて西鶴氏は次のように呼び掛ける。
「自分自身が仕事で何を目指すのか、何を実現したいのかを深く考えてほしい。一般のビジネスマンでも大手企業の部長になりたい人もいれば、ピリッと光る中小企業で経営者と共に仕事をしたい人もいる。価値観は人それぞれ。何がイヤでそこを辞めたいのかをヒントに、自分は何に幸せを感じるのかを明確にして、次の就職先を探してほしい」
米国CCE認定GCDF-japanキャリアカウンセラーの資格を持つ西鶴氏は、薬剤師に面談してじっくり話を聞き、個々の価値観を尊重しながら将来のキャリア設計の構築を支援し、それに応じた職場を紹介することを重視してきた。
こうした姿勢は求職側、求人側の双方から好評だ。求人側の薬局担当者や求職の薬剤師と直接対面せず、勤務条件や年収だけをすり合わせることはしない。
「専門家である以上、機械的なマッチングはしたくない。人材採用は本来、手間暇が掛かるもの。真剣にキャリア設計に迷っている薬剤師さんはぜひ来てほしい。時間をかけて相談に応じたい。こういうやり方をしているから、会社は大きくならないんですけど」と笑う。
キャリア・ポジション
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